ツアーレポート【CLT工場 施工事例物件 見学ツアーin四国】 2021/3/26~27
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業者の方
◇ CLTと木造非住宅建築の今を知る!︎ ◇
【CLT工場 施工事例物件 見学ツアーin四国】ツアーレポート
●1日目:株式会社サイプレス・スナダヤ (sunadaya.co.jp)見学
最初の見学地、株式会社サイプレス・スナダヤの砂田社長に直々にCLT(Cross Laminated Timber)工場内をご案内いただきました。
日本で2社しか生産していない12m×3mの原板(マザーボード)のプレス。約1時間でプレス+ノリづけが完了。曲げ強度が最高等級S120の桧CLTが出来上がります。
ここで生産されるCLTは桧、杉、トド松、桧+杉のハイブリッドの4種類。
生産数量は年間1万㎥、国内で2番目の製造能力を持っています。
構造設計や建て方に関しては外部委託で「版のみの販売」という形を取っているため、販売価格が抑えられていることが魅力です。ただ、実際CLTを使う上でのポイントは何と言っても金物接合にあります。
設計段階で、この金物接合が極力特殊ではないものを使える設計になっている事が、工期短縮やコストダウンにもつながります。
座学での意見交換会ではCLT活用の方向性について「在来木造」から「コンクリート造」への意識改革を求める声が上がりました日本人特有の感覚により現しでの利用が先行してしまい、欧米の様に単純に“コンクリートの代替品”としての使い方が浸透していかないことは普及を遅らせる要因となり得ます。
また、CLTを使う際には「断熱気密もしっかり考えていかなくてはならない」という意見も聞かれました。後半では弊社東北支店所長田中がリボス及び自然素材建材のプレゼン。リボス「クノス」不燃認定取得のニュースに「非住宅設計」を数多くしている設計事務所の方々から、早速多くの質疑が出ました。
今回のツアーには民間物件が多い戸建て住宅の工務店からも、多数ご参加いただき、現在の用途は非住宅の公共物件等が殆どであるCLTが、いわゆる民需としても落とし込まれ、補助金頼みから脱却しての自立歩行を始めるには、やはり「数として多い民間需要」のニーズが、増えていかなければならないと痛感しました。
●2日目・CLT実物件見学
見学先:高知学園大学・高知学園短期大学 (kochi-gc.ac.jp)、高知県庁地域材PR、 有)上田微生物 | Facebook、高知県立牧野植物園 THE KOCHI PREFECTURAL MAKINO、建築学会賞 竹林寺 (aij.or.jp)
2日目は1日目に確認した素材(CLT)の使い方を横畠先生にレクチャーいただきながら回りました。
2日目最初の視察先は、昨年竣工・県内初の木造3階建て校舎の「高知学園大学8号館」。
高知学園大学は奇をてらわず「地域の材と地域の力で施工出来る素直で簡素な木3学校」をコンセプトに、四国初の1時間準耐火構造(H26年基準法改正)で建てられた木3学校です。CLTのみならず、地域に開けた北側は在来で筋交いを見せ、木造らしさを醸し出しています。長尺CLT(12m)の床がせり出し下の階の軒裏となっているのがCLTならではの使い方で、下層階窓からの延焼に対する防炎対策にもなっています。
2番目の視察先「上田微生物研究所」は最高強度S120の「桧材・無節CLT」L=10.6mを使い、屋根と壁が一体になっています。この屋根壁兼用の材として強度を担保するために、S120高強度CLTが不可欠でした。まだ竣工前でしたが、合掌造りのような三角形のユニークな形状は、既に現地の風景に溶け込んでいました。
高知学園大学の外壁「土佐桧」には、「経年劣化」ならぬ「経年美化」として「外壁色の自然風化」した色合いを表現できる「リボス タヤ亜麻色」を使用しています。また、「上田微生物研究所」は同じく「土佐桧」の「純白色」をそこなわない「リボス クノス白木」を塗布しています。
今回改めてわかった事は、業界の方々が「CLT」という物に対して「非常に関心が高い。」ということでした。ただ現状CLTを使うには「非常に高いコスト」と「より専門的で先進的な知見が必要不可欠」でもあります。前段記述した様に、今回は、普段地域工務店として戸建て住宅を主力に建築されている工務店さんも多数参加されました。この現象から「木造文化国家」でもある、日本に於いて「日本独自のCLTの使い方」が求められている事を感じ、同時に「CLTの秘めたるポテンシャル」を垣間見る、想像以上の驚きもありました。
また今回の視察ツアーは「木材利用先進県・高知県」にて精力的に設計活動をされている、艸建築工房の横畠氏によるアテンドでCLT最新事例を詳細に解説いただき、大変充実した2日間となりました。
改めて御礼申し上げます。
今後も皆様に有益な「最新木造中大規模情報」を提供していきたいと思っております。