とうほく走り描き‖第48回 『発信で共感獲得』
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コラム
第48回 『発信で共感獲得』
白鳥 顕志さん(有限会社 木の香の家)
5月は、福島県猪苗代町で「ゲレンデ逆走マラソン」に初参加。スタートからスキーのゲレンデを中腹まで登り一気に下る。再び頂上の一歩手前まで登りまた下る。やっとゴールを目指す三度目の逆走では、体力の消耗でまっすぐ登ることも難しく、登山列車のスイッチバックのようなジグザク歩行、さらには両手両膝をつき文字通り這い上がって完踏した。過酷な10kmコースは、出走182人中179人が完走(大会HPより)。参加者は多くないが、コンセプトに出場者のマインドと体力がぴったりマッチした大会と言えそうだ。
地場工務店もまた、自社のコンセプトと共感するクライアントとの出会いが経営のカギを握る。岩手県北上市の『有限会社木の香の家』代表の白鳥顕志さん。自社HPでは自身のブログとは別枠で『教えて「断熱さん」!』という「高断熱高気密住宅コラム」を連載中。経営者の情報発信は、珍しくないが、ここまで絞られたテーマで書く人は少ない。しかもプロが教科書に出来そうな充実した内容だ。その効果もあるのだろう、断熱気密の知識の高い施主が多いという。一般的なビジネスの常識にとらわれず、工事の原価と会社の利益を公開した上で契約を交わすのも、根拠のない値引き交渉に巻き込まれず、施主との納得性の高い関係づくりにつながっている。結果「理論的にものごとを考えられ、経済的にも裕福だが、あまりギラギラしていない」お客様が多いとのこと。機能・質感が評価されて、天然スイス漆喰をよく採用いただくのもうなづける。
「流れに従って生きる」のタイトルでブログも書く白鳥さん。建設会社勤務時に高気密・高断熱と出会い、やがて独立。人との縁や突然の状況変化もそのときどきの「流れ」と捉えて進む方向を決めてきたそうだ。自宅新築も、本意でない賃貸経営を多額の借金とともに引き継いだことなどが原因で、二回もチャンスを逃したが、結果的に「流れに従って」良い方向に進んだと振り返る。
約15年を一幕と考える白鳥さんの人生観も面白い。就職から会社設立までが一幕目、念願の新居が完成した一昨年で第二幕が終わり、今は第三幕の導入部だと話す。流れに従い、さらなる高みへ登って行きそうな白鳥さんだ。
〈筆者プロフィール〉
中島信哉:株式会社イケダコーポレーションの営業として、
現在は東北6県と北海道を担当。仕事のかたわら始めた
サインペン画やマラソンが話題に。
【2018年6月 北海道住宅新聞掲載】