とうほく走り描き‖第47回 『新しいフィールドの設計へ』
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コラム
第47回 『新しいフィールドの設計へ』
鈴木 大助さん(株式会社鈴木弘人設計事務所)
6月に出場を予定していた100kmレース「いわて銀河チャレンジマラソン」が開催中止となった。コース近くで土砂崩れが見つかり、安全の確保が出来ず、山あいの一本道なのでルートの変更も難しいという。しかしランナーは、こんなときもフットワークが軽い。エントリーしていたラン友が、大会中止の発表直後から「かわりにどこかを走りたい」とフェイスブックなどで連絡を取り合い始め、あっという間に岩手県央を走るマラニックが企画された。地元岩手のランナーのサポートもあり、当日は10人ほどのラン仲間と走ることになりそうだ。こういう人のつながりは、ありがたい。
建築業界でも、人のつながりは大切だ。株式会社鈴木弘人設計事務所・鈴木大助さんは「地域により深く入って行こう」と、昨年の春から仙台近郊のクリエイターのための多目的なワーキングスペースをレンタルするという、設計事務所としてはユニークな事業に取り組んでいる。JAM(Johzenji Atelier Meets) の愛称で、認知も高まってきており、リピーターも出来てきた。
大助さんは大学卒業後、父親である弘人さんが主宰する同事務所へ。今では所長の兄・弘二さんとともに建築家として事務所を牽引する存在だが、入所当時に抱いていた「設計以外にも営業など、様々な仕事があるだろう」という気持ちをそのまま持ち続けているようだ。JAMは、元から構想があったのではなく、あるクライアントから受けた貸事務所のリニューアルの相談がきっかけ。あれこれ模索するうちに、今の形になっていった。「考えながら走る」という印象だ。そう言えば、以前「自分で壁を塗りたい」というお施主さまの住宅案件を、見込み客を集めての天然スイス漆喰体験イベントにアレンジしてもらったこともあった。
これからは、建てるべき建物そのものが減ってくるだろうから、設計事務所の仕事も「ある」ものをこなすのではなく「創る」ことも考えると話す大助さん。走る道をも創りながら、軽快に進んでいきそうである。
〈筆者プロフィール〉
中島信哉:株式会社イケダコーポレーションの営業として、
現在は東北6県と北海道を担当。仕事のかたわら始めた
サインペン画やマラソンが話題に。
【2018年5月 北海道住宅新聞掲載】