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エコバウ建築ツアー報告記|第12回 (2008)

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エコバウ建築ツアー2008は、「未来の建築とは」をテーマにオーストリアをメインに隣国ドイツへも訪れました。

 

1999年から始まったオーストリア連邦運輸改革技術省が推し進めているプログラムの中で、太陽熱、エネルギー効率を考慮したサスティナブルな素材を取り入れたパッシブハウスなどを「未来の建築」とし、2008年時点に建設中であった25の物件の内、数件を視察しました。

 

そのほか、企業が取り組む低エネルギー化や、工場・スーパーマーケットなどを見学しました。

 

新建ハウジング」掲載記事も併せてお楽しみください。

 

 


「新建ハウジング」(2008年10月〜12月)

 

 

ツアーレポート


 tour report

 

 

ツアープログラム

Day1ウィーン

マリアテレジア広場

19世紀の建物で、21世紀「未来の建築」の解説を聞く。

「未来の建築」=オーストリア連邦運輸改⾰技術省が進めているプロジェクトで、パッシブハウスと太陽熱利⽤低エネルギー建築⽅法を取り⼊れた建築の事。

810個のプロジェクトがあり、内の250個のプロジェクトが市の援助を受けた。

 

ザルク・ファブリーク

もともとの⼯場の躯体を残し、増築を加え温かいオレンジで染めた住⺠参加型の集合住宅。幼稚園やセミナールーム・サウナやプールなどの共同施設に加え屋上緑化もなされている。200⼈の住⼈の共同体で、年2回の住⺠総会にて⽣活の中での意⾒や新たな要望などを出す機会を持ち、皆「⽣きる喜び」を感じている。

 

ここに住みたい⼈の⾏列が今なおできていて、この近くに〝娘〟として同じコンセプトの集合住宅を作り、⾏列の⼀部の⼈々が⼊居した。壊して作るのではなく、既存のまま⼿を加え何度も再⽣して住むという評価が⾼い。

 

アルケミア・ノーヴァ(⾰新的植物科学物質研究所)

  マクヴィッツ博⼠によるセミナー

輸送事故のリスク(⼈的・海洋汚染)を背負い、商品が破壊された時にゴミとなっていく⽯油化学の流れから、太陽と水の恵みのエネルギーで得られて循環していく植物科学への転換。太陽と⽔の恵みのエネルギーで得られて循環していく植物科学へ。

peak oil ゆりかごからゆりかご。

⽣物学を学ぶのは⽣命を作る為ではないのと同じ様に、植物学を学ぶのは⽊(植物)を作る為ではない。⼈間は無からの創造はできない。世界中の果物や野菜の実、種、⽪、茎、根に⾃然の源がひそんでいる。

 

 

クンストハウス

芸術家フンデルトヴァッサーのデザイン。第⼀の⽪膚にも気孔(⽑⽳や汗腺)があるのと同じように、第三の⽪膚にも窓がある。起伏した床も、⼈間としてのバランスを保つという考え。

 

Day2モドリング

SOL4(オフィス・セミナーセンター)

ソーラーパネル、ソーラーコレクタ、ヒートポンプなどパッシブ基準の建築。→建築費は12〜13%のコストUPだが、ランニングコストは1/5〜1/8抑えられる。年間の暖房は250kw/㎡から12kw/㎡に。ヒートポンプによる熱交換も排熱回収90%。同じ仕様で住宅となると、公的援助がないと厳しいため難しいが、バイオマスやペレット、ソーラーコレクタなど、その場所で⼀番ふさわしい形を考える。

※これをやらないとエコ建築ではないという訳ではなく、使う⼈や場所でいちばんふさわしい⽅法を考える事が⼤切。

 

タッテンドルフ(粘⼟材使⽤のパッシブオフィス)

⾃然と⼟という意味の会社。国の援助を受けて未来の建築の為に。基礎の厚さ60㎝、壁断熱はストローベイルで40㎝、屋根もストローベイルで66㎝、ビオな葦の繊維に⼟を18㎝塗りこんだ。当時は⽊サッシがなかったので、中は⽊・外はアルミの複合サッシ。(K値=0.7)屋上緑化に加え後々はビオトープも検討。軒に所々スリットが⼊っているのはコウモリの巣。共存が窺える。

 

 

トィアースドルフ(幼稚園)

4千⼈の街で、環境省の⼤⾂が出⾝という背景もあり、環境に対する意識の⾼い建物という事で、12名の建築家のコンペによって選ばれた。壁の断熱はストローベイル43㎝、天井断熱はセルロース、床はコンクリートをベースにパーライト断熱+モルタル+リノリウム。外壁はカラ松の未処理、屋根はリサイクルアルミを採用。

内装の天井にはとうもろこしが原料の材を吹き付けてあり、落ちて⼦供が⼝にしても⼤丈夫なように。暖房は3kwのペレットストーブで1シーズンに3tのペレットを使⽤し、壁に配管を施工。

※パッシブ基準であることにプラス、⼦供の⽬線に合わせたステップや⾊彩についても考えられていた。1つ1つ意味がある。

 

エコ・ジードルンク・ゲルトナーホーフ

築20年のお祝いをしたところ+3年前の増築。コーポラティブ的に住⺠参加型で、⼤地を節約して住むという意識。⾬⽔利⽤で、⽣活の全てに飲み⽔を利⽤していた時には1⼈当たりの使⽤量160Lだったのに対し、飲み⽔のみの利⽤になり4Lにまで削減。各⼾にコンポストトイレがあり、溢れる上⽔は共同の浄化槽に集まり、葦や植物による浄化。下水の個体は肥料に使われる。集合住宅としての⾃⽴性を持ち、サウナや談話室、プールもある。

Day3リンツ

PASCOM(ITソリューションの会社)

パッシブ基準ではなく低エネルギーで、年間暖房費25kw/㎡。

 

スーパーマーケット

〝近くて新鮮〟という意味で、初めてのパッシブ基準。18kw/㎡で少しオーバーしている。壁厚30㎝でトリプル遮熱ガラス。全⾯はソーラーパネルで横⾯はカラ松。内装OSB。ヨーロッパ中では5か⽉というすごいスピードでできた。南側のソーラーパネルで必要電⼒の40%まかなえる。(時には売電も)

 

マーケットストリート

戦後50年代に建てられ、リンツを中⼼に3万世帯が加⼊している組合による⽀援。⾼齢者や年⾦⽣活者が多いため、住みながらの改修で⼯期は6週間。〝断熱と光〟外観は透明なファサードを実現する為、ソーラーフィルムに段ボール断熱。ポーラス状=蜂の巣的構造で、厚さ5㎝。⼀部分光を取り⼊れ⼀部跳ね返す。躯体蓄熱で年間暖房は180kw/㎡から13kw/㎡になり、CO2排出も、年間10万kgから1/10以下に削減。(K値=0.84)

 

Before

⬇︎

After

 

シュバネンシュタット・オーストリア

改修にあたって授業に⽀障がでないよう、休みを利⽤しながら主に乾式を取り⼊れ1年半の⼯期。外壁は⽊、内装の壁は⽯膏ボード、天井はトウモロコシに吹き付け、床はプラスター改修+塗装。建築費の1.4%は芸術的な要素に取り⼊れないといけない→各部屋の⾊彩に充てる。⼦供の集中⼒が以前20分が限界だったのに対して、40分くらいになった。年間暖房165kw/㎡から14kw/㎡に。採光においてもブラインドに⼯夫がなされ、遮光採光の⾓度を変えれる為、1700haの授業で必要な電気は200〜250w。

 

 

⼯場(追加視察)

⼤規模な壁を内壁〜断熱〜外壁まで⼯場で製作し、現場で組み⽴てる仕組みが確⽴されている。→プレハブ基準の建築⼯事に⼯期短縮・経費削減が可能に。天井に採光の窓が付いていて、ほとんど電気を使わなくても問題ないが、必要な時は急に電気が点くのではなく、職⼈が驚かないよう除々に明度が上がっていくシステム。

 

 

Day4ザルツブルク

ビオフ・ッハライト

ビオのスーパーマーケット、レストラン、倉庫、事務所を含めた建築。この1年で売上倍、130⼈の社員。アフリカやウガンダなどからのフェアトレード商品(20%)もあり、売るだけではなく⽣活も⽀援している。2002年から、素材・エネルギー供給全てにおいて負荷をかけないエコロジー建築の計画が進められている。外壁はカラ松の板貼り、50㎝の無処理ストローベイルに保護ガラス。

 

建築費は600万€、総⾯積4000㎡。2700㎡の暖房⾯積は、ヒートポンプ+地熱利⽤。20台のトラックで100km圏内の1400世帯への配送。すべてビオディーゼル(回収した家庭廃油)。売れ残りなどはコンポスト→肥料にして、室内の植えている緑の⼟へ。植物園かと思う程の緑に囲まれた室内。カビやダニに対する効果や、アンテナやPCの電磁波による社員の⽬の疲れに対する効果、専⾨医の健康チェックから社員の健康貢献まで確認。

※健康な⼤地、そして健康な体はとても重要で、未来に対して必ず必要!

 

シュタイナー(ヴァルドルフ)学校

1994年竣⼯+ホールと⾷堂の増築。オーストリアのモデル校。国、州、市からの財政援助を受け、5重ガラスのガラス張りで⾃然光、120m地下からの地熱利⽤+ヒートポンプを採用している。建築費1100万€、うちホールだけで700万€(ザルツブルクの1⼈の寄付より)。⾃然塗料は正確に塗るのではなく、コンクリートを重ね塗りをした上に塗料の⾊を重ねて動きを出している。

 

机や椅⼦全てが授業に必要な楽器である。オーケストラをつくるというイメージ。⽗兄の⼣べ・・・どんな教育か、どんな事を教えているかを伝える機会。→全ての⼈がシュタイナー教育の内容を理解して受けている訳ではなく、もちろんイメージから⼊る⼈もいるため。初めから全てを理解するではなく、深く知ってもらう。

 

 

ザルツブルクの集合住宅

〝ガラスと⽯が出会い、⾵を導く場所〟

・公開コンペにより最優秀になった建築。

・1Fはカフェや健康福祉施設、2〜4Fは分譲住居。

・寝室2m54㎝、アトリエ4mの天井⾼であるなど、家賃は⾼額。5000€/㎡

 

Day5 ミュンヘン

ヘルマンス・ドルフ(循環型農場)

〝ギブ&テイク〟(⾃然からの恵み→排泄を返す)の農的⽂化を創り出す。〝仕事と芸術は⼀体である〟〝⾵景と芸術〟⼤地そのものが芸術!豚⾁、チーズ、ビール、パンの4つの柱の柱として、飼育→加⼯→流通までを担う。育舎には発電パネルが備え付けられ、それぞれ家族ごとのグループに分けられ、成⻑につれて移動する。

 

集まった排泄は下記の通り分けられる。

(気体)バクテリアが変化しガスに→メタンガスの発電。(パイプで循環)

(水分)貯め池で混ぜ酸素を多く与えてバクテリアを生息させ浄化。

(個体)気体と水分がなくなった個体は臭いもなくなり、肥料に。

 

ホルガーケーニッヒセミナー

・未来をつくりだす住まいづくり=バウエコロジー+バウビオロギー。

・〝住まいが⼈間に、その⾁体と魂と精神に奉仕しないとすれば、⼀体何の為に建てるのか〟→逆であってはならない!

・計画→建てる→改修→稼働=今後ますます必要に。

・植物科学、⽯油化学について。⽊材の循環。

・未来を創り出す上で決⼼が必要である。⾃分⾃⾝の為ではなく未来の⼦の為に・・・

 

 

住宅展⽰場

(1軒⽬)

・ログハウスで、10〜15㎝の⽊にオガ断熱+⽯膏2重張り=30㎝の壁厚K値=0.13

・ここでの⽯膏は天然⽯膏で、電磁波98%カット。

・ペーパーバリア(防⽔シートなど)なしだから、全て呼吸する。

(2軒⽬)

・25㎝のレンガ+発砲ポリエステル

 

BMW本社

・6300㎡のソーラーパネル→外観を損なわないよう開発されたフィルムを貼っているが、⼀⾒そんな⾵には⾒えない。

Day6 ミュンヘン

ヨアヒム・ネーゲル⽒の建築視察

戦後、軍が撤退するのに伴い関係施設が減り、これを市が買い取って新たな住居として2,200世帯を作り出した。

(1軒⽬)

・2004年建築

・ハイブリット建築法

・分譲20世帯、住⺠参加型

・⾼くても4階層まで

・年間暖房15kw/㎡以下のパッシブ基準

 

(2軒⽬)

・2002年建築

・もともとは空港で、道路⾯積を少なくするよう⼯夫。

・分譲で1F には幼稚園。

・地域暖房+コージェネレーション(✳︎)。

・はじめの物件だったため、⼿探りでシンプル。データを取りながら進化。

(✳︎)電気を取り出すための内燃機関または外燃機関等の廃熱を利用して動力・温熱・冷熱を取り出し、電気+αでエネルギー効率を高めるシステム。(燃料電池やガス発電給湯暖房システムなど)ドイツでは地域でコージェネを利用している例も多い。

 

(3軒⽬)

・唯⼀の⽊造→お⾦がかからず、ランニングコストも半分。

・CO2削減を含め、全てに優れている。

・ルチードシステム(✳︎)=単版ガラス+⽊のルーバーで空気層を作る。段ボール断熱のようなもの。

・低所得者⽤賃貸。10€/㎡で90㎡

(✳︎)遮光と断熱、蓄熱を組合せたシステムを用いたファサード。表面はガラスその下に太陽光調節の役割を持たせた断熱層、そして蓄熱層という構造を持つ。太陽光調節にはルーバーやダンボールなどがあり、夏は遮光、冬は太陽光が蓄熱層に届く仕組み。

 

(4軒⽬)

・ゼロエネルギーハウス

・必要なエネルギーは、住居の近くでつくる。(ソーラーコレクタ(✳︎1)、ソーラーパネル(✳︎2)、ペレットバイオマス)

・〝エネルギーのかからない機械を作るのではなく、⼈間が住む〟という事を考えて作る事が⼤切〟

 

(✳︎1)ソーラーコレクター:太陽エネルギーを熱エネルギーに変換する機器。主には空気を媒体とする空気式と水を媒介とする水式がある。

(✳︎2)ソーラーパネル:太陽エネルギーを電気エネルギーに変換する機器。設置面積はドイツが世界1で日本は2番。

 

まとめ

オーストリアでは「未来の建築」プロジェクトを国で支援・推進している。その概要としては規定された対象に対し、入札を行い、以下の基準で選定される。

• 建物の全ライフサイクルを通じて、より優れたエネルギー効率化を図る。(パッシブ基準)

• 再生可能なエネルギー源、特に太陽エネルギーの積極利用。

• マーケットに対してのアプローチ、コスト面など意識した客観的な評価。

• 利用者に対しての教育。(パッシブ住宅への対応など)

 

現在、25物件(新築:14件、リフォーム:11件)が竣工している。

 

 

■ドイツでは環境にやさしい住宅のエネルギー消費基準を五段階に分類している。

1.低エネルギーハウス(年間エネルギー消費量約90kwh/㎡)

2.パッシブハウス(24時間換気、年15kwh/㎡)

3.ゼロ暖房エネルギーハウス

4.ゼロエネルギーハウス(太陽光か燃料電池による自家発電)

5.プラスエネルギーハウス(消費する以上の電力を発電・販売する)

2002年2月1日の「省エネルギー政令」発効以降、新築住宅はすべて低エネルギーハウスとすることが義務づけられている。

 

エコ建築=自然素材または断熱や高気密といった考えではなく、トータルで「社会的な循環=サステナビリティ」を意識した家造りを行なっている。自然素材の使用は当たり前で基本となっている。今回、建築に携わる人々(企画者、設計~施工者まで含めて)は数字による客観性や評価を突き詰めて、文化的、経済的な実現性を模索しながら、根本には「建築は人が快適に過ごせ、地球環境と共存する」ということをしっかりと意識していた。

 

そして、日本においても「超長期住宅の先導的モデル・プロジェクト」や「ソーラーパネル助成制度の復活」など政治的な後押しとCASBEEなどの評価基準などが出揃ってきている。

 

今後は日本の風土気候に合わせた日本独自の技術やシステム作りが加速していくことは明白であると実感した。

 


パンフレットPDF

 

 

 Pictures 

 

ツアーコーディネーター TOUR COORDINATOR

Holger Konig ホルガー・ケーニッヒ

1951年ミュンヘン(ドイツ)に生まれる。ミュンヘン工科大学及び大学院で建築を学ぶ。1983年にエコロジー建材店や家具工房を設立後、設計事務所も主宰し、建築家、家具職人、建材流通の多様な経験を持ち、バウビオロギー・バウエコロジーを踏まえた住宅、幼稚園、学校を数多く手がける。
主な著書としてドイツでベストセラーとなった「健康な住まいへの道」(1985年初版・1997年第9版)があり、2000年に日本でも翻訳、出版される。1996年から2001年まで、自然建築材料の建築業者の集まりであるÖKO+ AGの取締役会の議長を務める。以降もそれまでの経験を生かしたさまざまなバウビオロギーや木造プロジェクトの管理や研究を任され、現在も活躍中。

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