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とうほく走り描き‖第21回 『国産材「冬の時代」を生き抜く』

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とうほく走り描き21回イラスト

第21回 『国産材「冬の時代」を生き抜く』

常松 久義さん(株式会社ツネマツ

 

仙台市中心部から 20kmほどの距離に「仙台の奥座敷」とも呼ばれる秋保(あきう)温泉が ある。2月初めの週末、以前紹介した建築工房零(ぜろ)さんの新年会があった。車だと30分もかからないが、片道たっぷり3時間以上かけてラン。運転ではさほど感じないアップダウンを存分に味わい、景色も違って見える。

 

一風呂浴びて宴席に入ると、顔なじみの株式会社ツネマツ・常松久義社長の姿があった。福島県のほぼ中央に位置する天栄(てんえい)村でカラマツ・アカマツなどの地場産材を製材し、零さんへ供給している。先代が亡くなり、20代の若さで常松さんが 会社を継ぐこととなったのが昭和47年。昭和39年の木材の輸入自由化のあと、国産材にとって厳しい環境だったに違いないが「いいときを知らなかったのがかえって良かったんじゃないの」と、飄々と話す。

 

乾燥材供給の重要性に着目し、木材乾燥機 を導入したのが昭和60年。「結局シンプルなものに落ち着いた」と蒸煮(じょうしゃ)&除湿の低温処理乾燥を選び、天然乾燥を併用して各樹種に最適な乾燥技術を研究している。木材乾燥の話をする常松さんは楽しそうだ。乾燥方法によって、ねじれや反り、強度、さらには「ノコの入り方」まで変わってくるという。蒸煮とは乾燥釡の中に蒸気を噴出させる方法で、樹脂分などが木材の外に出やすくなり、のちの 除湿工程の時間短縮につながるほか、木が成長過程で風雨や地盤状態などの外部環境から受けている負荷を取り除く効果もあり、最終的に木材を加工したとき反りにくい材になるそうだ。

 

「木のストレスがやわらぐ」と常松さんらしい表現で説明してくれた。常松さんは、会社・工場の近くにご自宅を新築中。内装には、当社のスイスウォールを選んでいただいた。新建材中心の家づくりに疑問を持ち続けていて、今後は、エンドユーザーへ木 材や自然素材の情報を提供していきたいとのこと。まずは少人数での勉強会を構想中だ。ハウスメーカー・パワービルダー・ローコスト・輸入住宅FCなど様々なプレイヤーがしのぎを削ってきた日本の住宅業界。淡々と良質な地場産材の安定供給に努力してきた常松さんの目には、どんな景色に映っていたのだろうか。

 


〈筆者プロフィール〉

中島信哉:株式会社イケダコーポレーションの営業として、
現在は東北6県と北海道を担当。仕事のかたわら始めた
サインペン画やマラソンが話題に。

中島さんプロフィール画像


 

【2016年3月 北海道住宅新聞掲載】

 

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