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とうほく走り描き‖第23回 『ゴールを探す長い旅』

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とうほく走り描き23回イラスト

第23回 『ゴールを探す長い旅』

三浦 正博さん(設計島建築事務所

 

長い距離を走ると、なぜか心が静かになる。仕事では、なかなかゴールに近づかな いばかりか、逆に離れていくことさえある。ゆっくりだが確実に一歩一歩前に進む感覚が、気持ちを落ち着かせるのかもしれない。4月は温海さくらマラソンに出場。二つの峠越えがありコースは厳しいが、ゆったりした温泉街の風情も手伝って穏やかな心地よい大会だ。

 

同じ頃、三浦正博さんが主宰する設計島建築事務所の事務所兼自宅が完成。フェイスブック上に、気密測定、蓄熱を意図した土塗り壁、リボス自然健康塗料の水性エマルジョン・デュブロンのDIY塗装など現場の様子が紹介され、きっと三浦さんが目指す建築に近づく過程なのだろうと思っていた。三浦さんは新潟の大学で心理学を専攻。カフェ・雑貨店・住宅建築と多角的に事業展開する新潟市内の企業に就職して建築設計と出会い、実務の中で提案力を磨いてきた。当時、設計部門のデスクの島が「設計島」と呼ばれていたそうだ。

 

「一ヶ所に定着したくない」という三浦さん。その後1年3ヶ月に渡りアジア・アフリカを放浪。各地で現地の人にとても親切にされたという。エチオピアではお世話になった方に、三浦さんが「何かお礼を」と申し出ると「将来、アフリカの人のために」と返された。帰国後独立、仙台を拠点に仕事が軌道に乗り始めてもその言葉が忘れられず、2004年から2年間、こんどは青年海外協力隊としてモロッコ・フェズの世界遺産の修復と保存に従事する。着々と住宅の仕事をこなす今もなお、「アフリカの人のため」に何ができるか自問を続ける。簡単には答えが見つからない困難なテーマだ。

 

温海さくらマラソン当日はスタート前から雨が降り、暴風警報まで出る悪天候。しかし、淡々と走れば必ずゴールはやってくる。終盤は青空が広がり、満開の桜が出迎えてくれた。シリアの惨状などにも心を痛める三浦さん。「ほんとうに屋根が必要な人に、屋根をつくるのが建築の仕事なのでは」とも。思い描くゴールは、私の想像よりはるか遠くにあるようだ。

 


〈筆者プロフィール〉

中島信哉:株式会社イケダコーポレーションの営業として、
現在は東北6県と北海道を担当。仕事のかたわら始めた
サインペン画やマラソンが話題に。

中島さんプロフィール画像


 

【2016年5月 北海道住宅新聞掲載】

 

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