とうほく走り描き‖第46回 『作り込むビルダーと施主の好関係』
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コラム
第46回 『作り込むビルダーと施主の好関係』
遊佐 智浩さん(株式会社メープルホームズ仙台)
東日本大震災の被災地を、取材し続けているジャーナリストのラン友Tさんが、毎年3月11日に、仲間を募り宮城県沿岸部を走っている。今年は3月11日が日曜日ということで、20人を超える参加があり、私も土曜日から一泊二日の日程で気仙沼〜女川まで約80kmを走った。途中、津波で壊滅的な被害を受けた南三陸町を通る。大規模な土地のかさ上げ工事が進んでいて、やがて町となり賑わいを取り戻すまでには、まだまだ長い時間がかかりそうだ。
昨年その南三陸町で新築住宅を手がけた株式会社メープルホームズ仙台・社長の遊佐智浩さんは、細部まで魂を込めた輸入住宅を作り続けている。瓦やタイルなども自社で輸入し、微妙な貼り方まで支持するこだわりで、職人たちと現場でぶつかることもあったそうだ。無垢床の塗装で標準採用いただいているリボス自然健康塗料も、調合してオリジナルの色を作っている。
今回の南三陸町の現場は、同社の事務所から約100km。その距離を通いながら、手間のかかる仕事に取り組む職人さんたちの姿に心動かされたお施主様から、引き渡し後に丁寧なお礼の手紙が届いた。納得するまで妥協せず打ち合わせするお施主様で細かい設計変更も何度もあったが、その都度、嫌な顔を見せずに対応したスタッフへの感謝の言葉も綴られていたそうだ。微に入り細に渡って注文の多いお施主様は、工務店にとっては煙たい存在にもなり得る。しかし、一人一人の職人をねぎらう文面から「細かいからこそ、仕事も隅々まで見てくれていたのだ」と遊佐さんは気付かされた。
津波被災から立ち上がっていく町に住むと決める施主と、その家づくりを請け負う工務店。きっとどちらにも、相当の覚悟が伴うことだろう。
震災から7年、今日も多くの人々の手が、少しずつ新しい町を作っている。ゆっくりと変わっていく町の姿も、きちんと見て心に留めておきたいと思う。
〈筆者プロフィール〉
中島信哉:株式会社イケダコーポレーションの営業として、
現在は東北6県と北海道を担当。仕事のかたわら始めた
サインペン画やマラソンが話題に。
【2018年4月 北海道住宅新聞掲載】