とうほく走り描き‖第52回 『終の棲家と仮設に共通するつくり手の思い』
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コラム
第52回 『終の棲家と仮設に共通するつくり手の思い』
松本純一郎さん 株式会社松本純一郎設計事務所
2018年9月に北海道を襲った大地震。地盤の液状化により、大きく傾いた住宅の映像がニュースで流れた。住宅は日常生活の土台であり、大切な資産でもある。被災された方々の喪失感は、想像を絶するものだろう。
住宅の設計は、公共建築とは違った緊張感がある。「同じ人が毎日24時間使い、さらに個人の資産になる」からだ。仙台で、住宅・公共建築ともに数多くの設計実績を持つ松本純一郎設計事務所
主宰の松本純一郎さんはそう話す。経験から滲み出るような言葉に、住宅設計の意味をあらためて考えさせられる。「永く資産として住み継いでいける」家を設計したいとも仰る。東日本大震災のあと福島県では、建築家・自治体・建設業者・木材業界が一致協力し約6,000戸の木造仮設住宅を作った。その役目を終えた今、希望者に無償で譲渡(運搬・移築費用は含まず)されている。
日本建築家協会で、災害対策全国会議の議長を務める松本さんも、この譲渡事業を強く推進している。仮設を仮設で終わらせず、永く活用しようという試みだ。2018年11月には、宮城県石巻市で一般社団法人日本カーシェアリング協会の店舗としての移築が実現した。同協会の事業は、もともと被災地支援として始まっただけに仮設住宅を移築しての事務所移転は、関係者の感慨もひとしおだったという。
当社も外壁の塗装にリボス自然健康塗料の木材保護塗料を提供し、微力ながらお手伝いさせていただいた。「住む土地」と「つくる建物」によって、人の暮らしは大きく変わる。度重なる自然災害は、一層強くそう感じさせる。
秋、ランナーにはレースの季節。走ることはその土地が持つ歴史を知る機会となり、地形も体感することができる。これからはさらに、そこに暮らす人たちの気持ちにも思いを馳せて走ってみたいと思う。
〈筆者プロフィール〉
中島信哉:株式会社イケダコーポレーションの営業として、
現在は東北6県と北海道を担当。仕事のかたわら始めた
サインペン画やマラソンが話題に。
【2018年10月 北海道住宅新聞掲載】