とうほく走り描き‖第68回 『心地よさにとことんこだわる』
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コラム
第68回『心地よさにとことんこだわる』
三坂 恭一さん(Yu工房)
1月、JIA東北支部の新年会で、 三坂恭一さんから「新しい事務所に 早く遊びに来て」と声をかけられた。昨年、倉庫だった部屋を改装、リボス自然健康塗料の水性塗料デュブロンをご採用いただき、三坂さん自らの塗装で工事が終わったはずだ。さっそく翌週、新商品(木質繊維断熱材STEICO)のご案内を兼ねて訪問した。
事務所の壁面の塗装は、リボス社の天然顔料で調合しながら、部分的にあえてムラの出る仕上がりにするなど、事前の打ち合わせを越えて、現場で独自の工夫が加えられていた。違い棚風の収納や照明器具なども、自身でデザイン・製作してしつらえたもの。椅子などの家具はもちろん、古道具屋で購入した年代物のお盆といった小物まで、三坂さんが心地好いと感じるモノで調えられている。
体に近いところほど、材料やデザイ ンに繊細な意識を持つ三坂さん。無垢 材の床や内装の塗装仕上げのスペックも多く、まさに「手で触る」ドアノブは、良い質感のものを自分でストックしておくほどだという。近隣の仕事は、地元の工務店に特命で工事を依頼することも多い。工務担当、大工の棟梁ともに20 年来という長年のお付き合い。きっと言葉を越えて微妙なニュアンスが伝わるのだろう。新たな材料にも積極的な三坂さん、未経験の材料にチャレンジするときこそ、現場の呼吸が大切なのかもしれない。
東京オリンピックを目前に、マラソンの競技用シューズ、いわゆる「厚底シ ューズ」を認めるか否かの議論がかまびすしい。シューズの性能を活かすためには、相応の脚力と走る技術が必要とも言われ、誰でもタイムが上がる、魔法のシューズではないようだ。 建築材料も使い方によって、そのパフォーマンスが変わってくると思う。当社の材料も、三坂さんの豊富な経験により、新たな可能性が引き出されていくかもしれない。
令和の時代、また少しずつ新しくなっていく姿に注目していきたい。
〈筆者プロフィール〉
中島信哉:株式会社イケダコーポレーションの営業として、
現在は東北6県と北海道を担当。仕事のかたわら始めた
サインペン画やマラソンが話題に。
【2020年2月 北海道住宅新聞掲載】