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【動画】バウビオロギー講座②「サスティナブル」|石川恒夫

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    バウビオロギー

サスティナブル

最近“サスティナブル”という言葉がよく使われるようになったように思います。カタカナですから、なかなかうまく言葉が回らないこともあるかと思います。日本語では持続可能性“サステイン-sustain ”残す、残るといったもの、残すことができるということで「持続可能」という言葉が使われます。

 

この 「バウビオロギー25の指針」の5つごとに分けられた室内環境それから材料それからへ特にその持続可能な環境形成そして空間デザインそしてエコーソーシャルな暮らし方ということの中で、特にこの持続可能ということに関してもいくつかのポイントが挙げられています。

 

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当然、「再生可能エネルギー、太陽エネルギー、風力、水力、そういったものを使いましょう」とそれは言うまでもありませんね。また「天然資源は大切に使いましょう」それに対して意を唱えることもないと思います。そしてさらにこの中に「新築、改修においては、環境へのネガティブな影響を回避しましょう」とこれはどういうことなのでしょうか?

 

そして「地域固有の建築工法、建築を優先して、エコ収支の観点から最もふさわしい材料や経済循環を選ぶ」少し長い文章です。その中で特にエコ収支という言葉が特に出てくる。その辺が特にこのバウビオロギーの観点からとても大事、あるいはホルガーケーニッヒ(*)さんの“健康な住まいの道”において、20年以上前からこのエコ収支、そしてその生涯をたどるといったことの重要性を指摘されていたことが私にとってもどんどんその重要性を増してきていますので、そのことを特にお話ししたいと思います。

 

(*)ホルガー・ケーニッヒ Holger Konig 

1951年ミュンヘン(ドイツ)に生まれる。ミュンヘン工科大学及び大学院で建築を学ぶ。1983年にエコロジー建材店や家具工房を設立後、設計事務所も主宰し、建築家、家具職人、建材流通の多様な経験を持ち、バウビオロギー・バウエコロジーを踏まえた住宅、幼稚園、学校を数多く手がける。
主な著書としてドイツでベストセラーとなった「健康な住まいへの道」(1985年初版・1997年第9版)があり、2000年に日本でも翻訳、出版される。1996年から2001年まで、自然建築材料の建築業者の集まりであるÖKO+ AGの取締役会の議長を務める。以降もそれまでの経験を生かしたさまざまなバウビオロギーや木造プロジェクトの管理や研究を任され、現在も活躍中。

建材のライフサイクルをイメージ

私たちはどんなものでも、建築の材料であれ何でも他の基材、原材料が必要になります。それをなにかしら加工をしたり、熱を加えたり分離したり様々な中を通して、材料に作っていく。その過程で当然原料を運んで来なきゃいけない、それを細工をするために船を使ったり列車を使ったりして運んできて加工して材料を使って、それがまた運ばれていって実際に現場に使われて扉になったり床材になったり、もしかしたら電化製品になるかも知れません。

 

そして、しばらく使うとお役御免になる。解体で木っ端微塵になることは今はないはずですが、それがまた使われるのか要するにここで再利用、この扉は使えるからこっちにまた使いましょう、あるいはこれをバラしてまた材料に使いましょう、もしかしたら違う材料になるかもしれません。そういうようなことがまだできればいいんですが、もしかしたら埋め立てられてしまったり、あるいは燃やされたりして、要するに元の原料に戻るとは限らない。戻ればこれがずっとまさに円環になっていきます。でも実際にはこれがオープンエンドでこのままどこかに捨てられてしまうということもあるかもしれません。

 

別の絵でみますと、私たちが建物を作るというのは、長い列車を引っ張っていくようなものであると。実はどうしてもその最初のD51とか、機関車の先頭車両に目がいきますが、その後に色んな貨車がずっとつながっているんだと、そして運転手だけじゃなく、修理したり解体したりそれぞれにエネルギーがかかったりするというようなイメージができます。

 

私たち日本では、学術的にはまずものを作る、生産する、それからそれを運ぶ、輸送するで実際に誰かが作ると施工するとそれが実際に何十年のスパンで作られて、運用されると。イニシャル、ランニングという言い方をしますが、そして最後には廃棄される。廃棄と言った時にまた元に戻る場合はもちろんあります。

 

この中で、特にこの色のついている運用というところは未知数です。それが30年運用されるのか、100年運用されるのかによって当然その様々なエネルギーではそのCO2換算は変わってきます。このような5つのフェーズでこのライフサイクルということをとらえることが問題になってきます。

 

循環型エコシステムの重要性

ホルガーケーニッヒさんのテキストの重要なポイントは、その材料というのは循環する必要がある、誕生して加工して使用されてリサイクルされて私たちが責任をもって世界を形作っていくために、行為の結果も見なければならない。

 

これはある意味では誰もがそれぞれの履歴書を持っています。就職や進学の時に履歴書を書きますよね。その時に私たちどういうところで生まれてどういう勉強をして、どういう学校に通っていまここに立っているのかということを誰もが履歴書を持っている。もちろん私たちは全くオープンな未来を持っていますが、いつかはこの地上を離れるということになります。そのようなその生涯を見通すということが、材料にも言えるんだということです。

 

さらにこの細かい表は、その材料を加工する・材料を使う・材料をバラす、解体するリサイクルをする、そういうふうに3つに分かれております。当然その材料を加工すると言った時に原料がどこから来るのか。ここには鉱物・植物・動物というふうにその出所を3つに分けたりしている。それからどういう風に製造するのかと特に製造エネルギーというような言い方をします。

 

それから使う時には、それぞれの性能これは断熱性が良い、これは火に強い、あるいはこれは水に強い、それぞれの得意分野それぞれの材料が個性・得意技を持っています。それが私たちがさまざまな学術的に時間、あるいはそのエネルギー数値という形で定量的に評価をして、これはそういう素材ということを説明して、それをチョイスしてということになります。けれども在来のその建築材料学においてはそのような事実的な評価ということがメインになっていて、それが人間の健康の問題になるような有毒有害なガスを出すかとかそういったことまで問われてきませんでした。

 

あるいは、これはどういう匂いを持っているのか、肌触りを持ってるのかということも実際には問われてきませんでした。実際に肌触りがいいと言ってもなかなかそれは定量的に表現できないということもあるからです。実際に誰もが数値のことは何も知らなくても誰もがそこでそれを触って気持ちいいと思うか、不快だと思うか、それは瞬間的にわかるわけです。

 

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しかし、それはもちろん多様な人によってはこれがいいという人もいるし、これが嫌だという人もいる、そのなかなか難しいところがあるいます。でも実際にリアルな体験としてそれぞれの素材に対しての好感反感を誰もが持つことになります。そして最後には、先ほど言いましたようにリサイクルできるのかコンポストになるのかあるいは燃やすしかないのか、そういったことが問われますし、できればこのエコシステムにまた再編入できることは、可能であればそれに越したことはないということになります。

エコ収支の実験、検証

私のかつての共同研究の一つをご紹介したいと思います。実際に6畳の部屋を作って、全部仕様は同じ、内装の内側の表面だけひとつの部屋はビニールクロス、それからひとつの部屋は土壁、これは純粋な土壁にして、多少厚さがそこで違ってくるのですが、ほかの骨組み関係、開口部を一切同じにして、その中の室内環境まさにライフサイクルを評価をしました。

 

このように、土壁の土の内装が見えてるところ、白いのはビニール壁紙になりますが、床も天井もほとんど全く同じことになります。そしてエコ収支、収入と支出そこにエコという言葉がついていてエコロジカルに収入支出、それはお金のことだけじゃなく CO2の換算であったりエネルギー量であったり、それがどういうふうにプラスマイナスがあるのかということを評価することがエコ収支ということになります。

 

面白いのが6畳で、これは実際に工務店さんのご協力もあって普段は当然出せないお金、あるいはどこから材料をとってきているのか、それを全て明らかにしてどのような材料がどこからきて、何人の職人さんによって作られたのかということを含めて、職人さんがどこから何キロ離れてその現場に行ったのかを含めて全部数値化して拾って評価したものになります。

 

このグラフ棒線の上のビニール壁紙と土壁の2つのところを見ますと、上はCO2の換算(CO2排出量)と下はエネルギー消費量(kwh)になりますが、圧倒的にビニール壁紙のところに大きなエネルギーの負荷がかかっています。特にこの水色の部分は、生産領域=ビニール壁紙の製造に要するエネルギーがとても大きいということを意味しています。

 

逆にちょっと見にくいですが、この緑色の25と書いてあるのは施工のところになります。こちらは115と記載があるのは土壁の方ですが、実際にこれは6畳の壁にビニールクロスを貼るのに2人工あればできてしまうのに対して、土壁の場合にはだいたい11か12人工必要だったと思います。単純に言えば要するに5倍6倍かかるわけです。5日間、一週間ぐらい差があるということです。

 

それは施工するその領域だけ見ればそれだけかかるし、ややもすると私たちは「土壁や漆喰いいよね、やっぱり日本の空間にはいいよね」というふうに思いながら、また「高いよね」と言ったときに施工するというフェーズだけを切り出しますと、確かにそれだけ5倍6倍かかっているというのは確かですから、多分数値はほぼ合っているだろうと思います。

 

しかし、製造するということ、それからこの廃棄するということを考えると、実際にはそれだけの大きなその支出、そのエコ収支的には分が悪いというのはビニールクロスの現状であると。右の階段状になっているのは、特に運用領域のところだけを切り取ったもので、これはもちろん実際にどういう風に使われるかというのは未知数のところがあります。実際に対応年数といった問題は、実際の商品を基準にして換算しています。

 

細かく階段が刻まれているという事は、こまめにそこでメンテナンスをしている、場合によっては剥がして、やり替えてということが必要になるということを示しています。これがほぼ棒状になれば、この階段の勾配が緩いということは長く持って、多少何十年間のスパンの中でやり替えるなど、そういったことを意味しています。そうすると、実際に運用領域で長く使えば使うほど、木造の場合作り直さなきゃいけない、廃棄しなきゃいけないという場合には階段が急勾配になってどんどん上に行ってしまうということを示すことになります。

 

ですから、長く使えばその商品はどこかの段階で多少お金がかかっていたとしても、後々になると安くつく。これがちょうどその土壁とビニールクロスのコストの経年変化です。これが30年とか45年とか、その観点によりますが、その関係が最初は高くても後々安くつくという、グラフはそれを意味しています。私たちがこれを取り上げた時に、土壁を用いることで実際にビニールクロスを用いるよりもかなりの二酸化炭素を削減できるというようなことが結果として分かってきました。

このようにどこから運んできたのか、何日作業したのかということを全て透明化した上で製造、運搬、施工そういったフェーズの CO2の排出量あるいはそのエネルギー使用量を検討していくと土壁の方がCO2の排出量やエネルギーの使用量が少ないということが明らかになりました。

ファシリティマネジメントとバウビオロギー

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このように長いスパンで、建築というのはもちろん「素晴らしい空間」ということがまず問われるのですが、長い時間生き抜くということを見通していかなければいけない。

 

最近は FM=ファシリティマネジメントという言い方をするようになって「維持管理」がとても大事だという視点が強くなってきています。特に公共の施設においては空き家になって無駄になってしまう。そうなるとますますその維持管理が問題になります。そのFM(ファシリティマネジメント)とは、そういう意味ではバウビオロギーの視点にもすごくつながるものがあるということがわかっています。

    
ただ、そこに冒頭で申しました健康や環境の負荷をかけることができない要素として、バウビオロギーならではということがあります。まずこの第2回目の話の中で、その時間軸ということを捉えた上でバウビオロギーの持続可能性の問題、サスティナビリティ、それからライフサイクルそれからエコ収支といったことをお話させていただきました。

 


 

バウビオロギー新25の指針 2018

 

講師プロフィール

石川 恒夫(イシカワ ツネオ)

1962年東京生まれ。早稲田大学大学院修了。ミュンヘンエ科大学留学、前橋工科大学工学部建築学科教授。日本バウビオロギー研究会代表。2004年大学発べンチャー(有)ビオハウスジャパンを設立、2011年に日本人初のバウビオローゲIBN資格取得。建築家として幅広い設計にあたる一方、日本におけるバウビオロギーの第一人者としてドイツと日本を結ぶ活動を多岐にわたり取り組む。

日本バウビオロギー研究会

 

 

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バウビオロギー講座①「第三の皮膚

バウビオロギー講座③「光と色彩

バウビオロギー講座④「次世代を見据えた家づくり

バウビオロギー講座⑤「ベトナムの事例

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