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【動画】バウビオロギー講座①「第三の皮膚」|石川恒夫

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    バウビオロギー

 

 

バウビオロギーとは

バウビオロギーとは何でしょう?

直訳では『建築生物学』と訳します。

では、どんな意味を持っているのでしょうか?

バウ・ビオ・ロギーに分かれます。

“BAU(バウ)”は、作ること、建てる事、建築という意味ですが、この言葉には「ふるさと」「馴染む場所」「安心できる場所」といった意味もあります。

“BIO(ビオ)”は、英語のバイオー生物、生命という意味があります。

“LOGOS(ロギー)”は、英語でロジックで論理。論理があるということが秩序があるということです。

 

ですから、バウビオロギーは私たち人間が動物と同じように命を持った生物であり、それが自然だったり宇宙の秩序の中でどのように生きるのか。それも地球に生きるたくさんの人たち誰もが安全に、健やかに、安心して生きる権利を持ち、誰一人踏み外してしまうことがあってはならない。そのための術としてバウビオロギーがあるのだということがわかります。

 

そうはいってもなかなかバウビオロギーとは何なのかイメージできませんが、バウビオロギーの父アントン・シュナイダーはバウビオロギーが人間と居住関係の間のホリスティックな関係性についての学であると定義づけました。重心は全体性ということになります。もちろんそれでもまだ「わかった」ということにはならないと思います。バウビオロギーは健康や環境に負荷をかけない建設、あるいは居住環境、暮らし方を目指すものです。

「住まいづくり」は「巣まいづくり」

もう少し分かり易くお話ししていきたいと思います。

私たちは衣食住という考え方に慣れ親しんでいますが、その順番を食・衣・住にしがちだと思います。食べるものによって私たちの身体皮膚が作られているからです。そして第二の皮膚がこの洋服です。これによって私たちは暑さ寒さを防ぐことができます。そして第三の皮膚が私たちのこの生活空間であると考えると、食・衣・住の順番になります。

 

さらに第四の皮膚をイメージするとすれば、それは私たちが住む地球そのものと言っていいと思います。そうすると、この第一の私たち固有の身体皮膚から第二、第三、第四になると普遍的な人間すべての人をあまねく覆う皮膚というふうに、皮膚は第一から第四まで連続しているものと考えることができるでしょう。日本語の当て字ですが、「住まいづくり」とは「巣まいづくり」であるとアントン・シュナイダーの本に書かれています。

第一の皮膚

もう少し具体的に第一の身体皮膚をつくる食べ物について考えてみましょう。私たちは食べ物に無頓着な方はあまりいなくて、これはどこで作られたのか、何が入っているのか?体内に取り込むのだから、安全なものを食べたいと思うのではないでしょうか?

 

群馬の高崎で有機の野菜を作って販売するBIOSK(ビオスク)の桜井さんは自家採種で栽培する「固定種野菜」の栽培に取り組んでいます。今の野菜の多くはF1という一代交配種で種から生産されているものです。味や形がそろっていて病気にも強いから大量生産に向いているというのが特徴ですが、そのF1の野菜からは次世代の種が実らないという問題があります。農家は種屋さんで種を買うのが当たり前の時代になってしまいました。わたしたち消費者もつい見た目のきれいなものを手にしがちです。自然のものは様々な影響を受け、見た目はきれいでなくても、味の品質が劣ることはもちろんありません。見た目では判断できない質を私たちは見失いがちになってしまっています。

 

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種の袋の裏に書いてある原産地をよく見てみると、メキシコ、アメリカ、イタリア、・・・ほとんどが外国産です。「何1000Km何千Kmと離れた外国の土地で採れた種を運んできて、気候から全然違う土地である日本で育てる際に生じる不具合を農薬や肥料などの農業資材を大量に投入して何とか帳尻を合わせているというのが、今の農業の現状ではないでしょうか」という桜井さんのお話を聞きました。

 

食べ物の話を聞いているのに何だかこれは私たちの建築の業界にも通じるのではないだろうか?私たちはどういう素材を使っているのだろうか?という問いが生じます。本来はその土地の気候風土から採れた水を吸って大きくなった食べ物を食べる。地場の固定種野菜を選ぶことが人間としての本来の感覚ではないかという問いが沸き起こってきます。

第二の皮膚

第二の皮膚である被服ですがダーウィンの進化論を見ると、人間が進化の過程で唯一失ったものは、体毛であると書いています。私たち人間は体毛を失う代償として第二の皮膚である衣装を身にまとうようになったということになります。

 

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スイス生まれのエコロジーブランドで子供服などを扱っているアルケナ社のデザイン哲学に「衣服をまとうことは体を保護するだけではなく、着る人の個性や人生観を表しています」とあります。これを見て、私たちが住まいを持つことは、雨風から人間を保護するだけではなく、住む人の個性や価値観を表すものではないだろうかと思います。アルケナ社によると、良質な素材に接するということは自分も自然の一部であるという喜びを持つこと。また人と自然の調和、人と人との関係の調和、社会との調和も必要。ということでフェアトレードの企業として活動されています。

 

自然の円環の中で、自分が円環の外に立っているのではなく自分もその円環の一つなのだということがこの会社のフィロソフィーであると言えます。

 

 

私の妻も着物が好きでよく着ているのですが、妻の書棚に法政大学の学長の田中先生の「きもの草子」(ちくま文庫)という本があって、何気なくパラパラとめくっていたら、衝撃的な文章がありました。

 

「基本的な衣食住さえあればいいという考え方が浸透した。小中高では体育服のジャージのようなもので先生が授業をする。建物は合板とビニールとプラスチックでできていて、食べ物には農薬・殺虫剤・防腐剤が混入されているのが普通だ。単に生きていくのには美はいらない。しかし汚い、と思ったとたんに人の心はすさむ。」

田中 優子著「きもの草子」筑摩書房

 

田中先生はその洋服・着物を『空気さなぎ』という言い方もしています。実際に私たちは洋服を着始めてから150年ぐらい、明治維新頃からのまだ短い歴史しかないではないか?という問いかけをしています。私たちが第三の皮膚と言っている住まいのあり方、材料を深く考えるきっかけがこの田中先生の言葉にもあるのではないかと思います。

 

第三の皮膚

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文豪で自然科学者のゲーテの言葉に「生命あるものは、覆いを必要としている」という言葉があります。

生きとし生けるものすべては、樹木であればその幹にある樹皮がそうですし、動物もその被膜があります。本来生きとし生けるものは粗暴なエレメントである火・風・水から身を守るための被膜を必要としている。確かにレオナルドダヴィンチが描いた胎内の赤ちゃん、地上に現れてからも産着でくるまれたり、ベビーカーにくるまれたり、小さい子供は段ボールの中に入って遊ぶのが好きなのも、手に触れるおもちゃにしても、第三の被膜に保護されてだんだん成長していきます。

 

 

一方、巣作りの巣としての住まいを考えてみましょう。鳥の巣コレクターの鈴木まもるさんという方がいらっしゃいます。講演会でお目にかかったのですが、小さないくつかの鳥の巣を展示されて、それを近くで見ることができました。鳥の巣が場所に応じてなんと多様に巣を作っているか。形も違うし、材料も違うし、どういう外敵がいるかによっても違った安全な巣を作っていることを見ることができます。鈴木まもるさんの展示にある鳥の巣は土壁のようにできています。その土地の住民はほとんどこの鳥の巣を真似て自分たちの家を作っているそうです。鳥は次の世代に子孫を残すことに全力を傾けているわけです。

 

ゲージの中で卵を産め産めと育てられればどれだけのストレスが生じるかを考えると、子孫を残していこうというような「生き物としての本来の在り方」が人間においても大事なのではないかと思います。朝、電車で1時間、2時間かけて通勤してまた、左も右も同じような部屋に戻っていくようなことの繰り返しで、実は多くのストレスを抱えているのではないかとも考えられます。

 

現在のバウビオロギー研究所の代表であるヴィンフリート・シュナイダーの言葉に「たくさんの動物が自ら自分の巣を作り、多くの場合にそれを飾り立てることすらする」ように、人間も生き物です。人間も積極的に創造的に、楽しく自分の住環境を美しく作りたいと願うものではないでしょうか。バウビオロギーとは何かを考えた時に、第三の皮膚ということから動物、植物、そして食べる、着る、住まうということがいかに本来関係しあっているものなのかをまずお話ししました。

 

未来を目指して

バウビオロギーのビジョンとしてキーワードを上げるとすると、私たちはまず、「自然が先生」、自然を模範とします。キーワードは健康。これは世界的なメガトレンドです。そして、私たちは新しい建築の文化を作っていきたいのであるということ、その材料が素晴らしければあとは結果がどうであれいいということではなくて、人が見惚れるようなデザインもとても大事です。

 

そしてイノベーション。かつてはよかったから、ただ昔に返りましょう。とすべての電化製品をやめましょう。すべての合成材料はやめましょう、ということではありません。私たちは現代の技術と知見を持って新しいものを作っていく。あくまで未来を目指していくものだということ。自分の家は良いものができたと、そこで完結するのではなくそれを多くの人たちに伝えていく。

 

ともに地球上に住まうというエコソーシャルな視点が必要です。そして現実的には大きなお金が必要なので、本当に必要なものは何かということを考えつつ、これから人口減などの社会的動きの中で、小さく建てる・少なく建てる。という視点も必要だと思います。そして廉価である。これは日本語だと誤解してしまうかもしれませんが、価値に応じた価格であるということ。

バウビオロギーの25の指針

 

バウビオロギー新25の指針 2018

数値で判断する定量化のために特にバウビオロギーでは一番大切な場所ー人間が眠って心身を再生する場所である寝室を起点とした指針。量より質を求める事。政府や企業ではなく客観的に見られるよう中立的な立場であり続けること。そのようなことを踏まえて私はホリスティックに新たに考えて行動するというパラダイムシフトが求められてくると思います。ホリスティックに考えるということは、より悩むということでもあります。もっと考えて決断しないとならない状況なのだということです。

 

バウビオロギー25の指針値というのは住まいづくりの上で考えなければならないことを様々な観点からまとめられています。パイオニアであるアントン・シュナイダー博士によって40年以上前にあげられたことが、今日にまでほとんどアクチュアルに継承されている羅針盤ともいえるようなものです。多くの方から25もあって、もう少し少なくまとめられないのかというお問合せがありますが、なかなかそういうわけにはいかないのです。室内環境のこと、材料のこと、デザインのこと、持続可能性・サスティナブルであることエコソーシャルという5つに大別されて、それぞれ細かい内容がありますのでお話ししていきたいと思います。

 

1回目は、概論としてバウビオロギーとは何か、「第三の皮膚としての住まい」ということについてお話しさせていただきました。

 

ikeco vol.29バックナンバー|【特集】BAUBIOLOGIEバウビオロギー『第三の皮膚としての住まい』

 

講師プロフィール

石川 恒夫(イシカワ ツネオ)

1962年東京生まれ。早稲田大学大学院修了。ミュンヘンエ科大学留学、前橋工科大学工学部建築学科教授。日本バウビオロギー研究会代表。2004年大学発べンチャー(有)ビオハウスジャパンを設立、2011年に日本人初のバウビオローゲIBN資格取得。建築家として幅広い設計にあたる一方、日本におけるバウビオロギーの第一人者としてドイツと日本を結ぶ活動を多岐にわたり取り組む。

日本バウビオロギー研究会

 

 

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