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【動画】バウビオロギー講座⑥「自然素材」|石川恒夫

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    バウビオロギー

 

見る、聞く、嗅ぐ、触れる五感ですね。感覚の知覚がもたらす印象を支援するのが、私たちの建築に携わる者の使命ミッションでもあります。

建材の選択と空間のしつらえ

25の指針には様々なポイントがあって、それはお互いに浸透しあうもので、一つ一つの要素に明快の境があるわけではありませんが、25がおよそ5つのグループに5つの要因として分かれている。そして室内環境、どのような温度、湿度を持つのか、暖かいのか冷たいのかのような室内環境、それからどのような材料を用いるのか、それによって空間が変わってまいります。

 

そして、そのような材料が組み合わされてどのような空間が生まれるのか、その色や形の意匠、デザイン、そして持続可能な環境を形成するために、どのような室内環境を作り、どのような材料を使うのか。そしてそれが共に住まう一つの共同体として、どのような社会的な意味を持ち得るのか。食住一体のようなことも、一つのバウビオロギーのプラットフォームの一つであります。

 

そして、その室内環境とその材料、ある意味では実は当たり前のことですが、同じ四角の部屋でも、そこに絨毯が張られているのか、木の板が張られているのかによってその部屋の環境は違うわけです。あまりにも当たり前のことですが、大学のような高等教育において建築材料それから、建築環境工学と、そのような形で室内環境のことと材料のことと分かれてしまっている。それはどうしても分析的な発想からいくと、そうせざるを得ないのです。

総合的、多面的な見方をする

バウビオロギーのホリスティックな視点を考えますと、どのような材料を使うかによって室内環境は異なる。その当たり前のことを、一つのホリスティックな多面的な面から考える、それが一つの大きな特徴でもあります。この今日の自然素材ということは当然合成素材、あるいは石油系の素材に対しての一つ、大きな括りであるわけです。その素材をどのように使うのかどのように選ぶのかということを含めて自然素材のメリットといったことも考えておく必要があると思いました。このように自然素材、あるいはヨーロッパによっては石の素材によってはその放射性の貴ガスがそうであるラドンの問題も出てまいります。

 

それから断熱性、蓄熱性、あるいは表面温度と湿度・空気温度のバランスの話。それから調湿性能、それから材料によっては、湿式工法によって水を含んでいる、その乾燥の問題。材料の乾燥の問題、それから遮音の問題。これは別に材料選択だけではなくて、室内環境にもさきほど言いましたように当然影響してくる問題でもありまして、それがデザインにも当然反映されてまいります。

 

ただ、一つの区切りとして自然の素材と言うようなことをまず考えていきたいわけです。それは当然、そのようなインテリア、造作にかかってくるし、その仕上げが一つの雰囲気を、空間の雰囲気を変えていくということになります。

 

まず、この表は断熱材の様々な種類がありまして、項目で熱特性、湿度特性、透湿、毒性、製造等々さまざまな要因が書いてあります。通信教育のバウビオロギーの七巻のテキストの一つの表ですが、それに対して良い・悪い・普通のような評価が与えられております。

 

ここで何が言いたいかというと、私たちは材料を選択すると言ったときに、高い安いといった、あるいは持ちがいい、悪いみたいなことを考えがちである。それは設計する方もお客様にとっても、あるいはその売り手にとっても。これは安いからお買い得ですよというようなことが言われる。けれどもここには9つのカテゴリーで、クライテリア判断基準でさまざまな評価があって、トータルに総合評価としてどうかという表です。

 

その素材によっては熱の特性はとってもいいと、要するに断熱性ですから、一応断熱材のグループなので性能はいいよと、しかし例えば排気には問題があるよと、あるいは耐久性に問題があるよと。コストパフォーマンスは良い、悪いというようなことが掲げてあります。これがバウビオロギーとは?という時のホリスティックな全体性ということの1つの視点から生まれてきた表だという風にお考えいただきたい。要は、私たちはその高い安いという一つのところだけで、このものにこれにする、これにするということを決断するのではなくて、多面的な考え方を求める必要があるがゆえに、バウビオロギーを知れば知るほど悩ましいことになってしまう。あれもこれも考えると、ではどれにしたらいいのだろうということになってしまう。

 

どれかに決断をしなければならない、壁にはこれ、天井にはこれ、屋根にはこれと決断するときに、なんだかんだ言ってやはりそのお金の点を尊重せざるを得ない。あるいはこれは製造エネルギーのことを大事にしなければならないと。そのような様々なその時のケースによって、最終的に決断されてくることを考えるときの一つのまなざしを私たちは広く持つことが何よりもバウビオロギーで大切にしていることです。そのプロセスが大事だと。結果としてこれにしたと。

 

後からこれにしておけばよかったなんてこともあるかもしれない。でもさまざまなことを考えるということ、逆に考えないってことが、私たちの建築文化を崩壊してしまうことになるのではないかというふうにも逆の意味で言えると思います。

自然素材のメリット

そうはいっても自然素材は何がいいのだろうかということを考えますと、例えば無垢の木を使えば、そのぬくもりがある、また同時にその人体からの熱の逃げを抑えるとか、あるいは蓄熱性が高いことによって温度が安定するなどそういったことが考えられます。

 

熱伝導率というのは、熱をどのくらい伝えるのか伝えないのかといったことの数値的な根拠がその背景にあります。私たちは、熱をこういう風に伝導し、直接伝えるそれから空気が滞留する、それから放射という形で輻射によって熱の授受がある。そのような形式の中で生きているわけです。ですが、やはり私たちの周りが冷えていると当然私たちの人体の熱が奪われてしまう。そういったことからも、熱をどのように受け渡すのか、その素材によって特性が異なります。そのため、そのことをまず考える必要があり、その観点から無垢の素材、木の素材はとてもそのメリットがある。

 

あるいは、このグラフはとても大事なのですが、私たちはややもすると、温度が高い低いというようなことを言いがちですが、そのときには空気のこの温度だけしか考えていない場合が多い。でも実際には、この空気の温度とその材料、表面がもつ床にしても、壁にしても、その周壁面の温度の関係のバランスを見ていく必要があると。

 

大学で講義していますと、たいてい月曜日の朝、最初の講義は建物が冷えきっていて、学生も教員も「寒くてたまんない」なんてことが冬場にはよく起こります。冷え切ってしまって、どんどんどんどん体内の熱が奪われる。それを考えると、この周壁面の温度と空気温度のバランスが実は大切だよと。それは結果的には材料選択にもかかわってくると、熱を断つという断熱性能と蓄える蓄熱性能そのバランスがとても大事だということになります。

 

あるいは、裸足で足の裏からその材料に触れることによって熱が奪われる、あるいは熱が奪われないという、その快適性、あるいはその不快性ということを誰もが体験しております。それも熱の伝導率、材料の伝導性能によってくるわけです。それから多孔質の快適な自然の例えば木の素材というのは、ウレタンのような塗膜を施さない限りにおいては、沢山穴が開いていることによって熱を蓄えるという、そのことから熱とともに調湿性能を持つと、それは結果的に空気の湿度変動を和らげるというようなことにも貢献するわけです。

 

このように同じスタートで、例えば蒸気を部屋の中に出すことによって空気環境を考えたときに、調湿性のある材料ですとほどほどに上がってもすぐ下がる、それは材料が湿度を吸って水蒸気を吸湿してくれているから、それがプラスティック、極端に言えばコーティングされたような空間ですと、ずっと室内の水蒸気は上がったままで、なかなか下がっていかない。

 

そのようなことから、材料によって、湿度を調節する、しないということも大きなポイントで、そのときに自然の素材はポーラス(多孔質)な材料の特性から、目を潰さない限りにおいては、その吸湿性能を発揮してくれるということが起こってまいります。様々な素材の特性、熱伝導率、あるいは容積比熱、さまざまな熱貫流率のような環境工学的な意味での数値を定量的な意味で説明することが可能であり、それが一つの判断要因になります。

 

けれども私たちが忘れてはならないのは、生きている存在としていつも振り子のように揺れ動いている。光が過剰であればそれも鬱陶しいし、かといって光が少なければ過少であればそれはそれで困ったことにもなる。ずっと長雨が続くと、誰もが鬱々とした雰囲気になるのではないでしょうか、やはり朝から光が溢れていると、それだけで私たちは嬉しくなる。そのように実は外の環境によって私たちは本当に霊、心は揺れ動いて楽しくなったり悲しくなったりする。

 

それが私達の環境によって与えられるということを想起するときに、それが自然の環境であればともかく、人工的に作られた環境においても、どうせであればいつも朗らかに和むような場所を作っていきたいものだというふうに思います。

バウビオロギーは人間的であり未来的

見る・聞く・嗅ぐ・触れる、五感ですね。感覚の知覚がもたらす印象を支援するのが、私たち建築に携わる者の使命(ミッション)であります。それによって、まさに振り子のような私たちの気持ちがそれによって揺れ動くことができるからです。私たちはややもすると「全自動」という言葉に惹かれてしまいます。

 

全部調整してくれますよと。もしかしたら、このAIというこれからの世界の中においては全部私たちの体調も考慮して室内環境を調節してくれるかもしれません。でも本当にそれは素晴らしいことなのか。それは状況によりますが、実際に私たちは暑いと思えば窓を開けるし、うちわを扇ぐし、洋服を脱ぐし、場合によってはカーテンを開いたり閉じたりする。そうやって私たちは自らアナログ的に自分たちの身の回りを程よく調整してきたのではないでしょうか。

 

その人間の本来の生きるという、そのあり方を考えたときに大きな不特定多数のビルディングなんかではそれなりのコントロール制御が必要にはなるかもしれませんけれど、その居住する場所においてはある程度限定された人たちが集う場所においては本当に小まめに自分たちが自分たちに快適な場所を創っていく。そのような自由があってしかるべきではないかと思います。

 

バウビオロギーは、一つの包括的な私たちのこれからの現代、未来における住まいづくりの羅針盤であるということを、今回様々な視点からお話してまいりました。このコロナ禍の時代において、例えばオンラインで一瞬にして距離を意識することなく、画面上で会うというようなことが可能になった。これは今までにないような技術でもあると思います。でも誰もが一つの場で出会って、そこでそのお互いの空気を感じて、そこで何かお互いの気配を感じて、そこで話をすることの重要性ということは、実は誰もが意識していることではないかと。あるいはそれが必要なのではないか、ということを分かっていると思います。

 

大岡信さんの本の中に「うたげと孤心」孤独な心と書いた宴と孤心という言葉のタイトルの本がありますが、宴でいつもそこに集っていく。そこに一つの祝祭性があって、そこに一つの出会いがあって、そこに建物を作るということの意味、あるいはそこに人が集うということの意味が問われていると思います。

 

もちろん、一人一人が自分一人になって考えるということも大切だよと。バウビオロギーはそういった意味では、今まで素通りしてきてしまった何か無意識で、ただルーティンで、カタログから選んでその物を作るということにも警鐘を鳴らしつつ、そしてやはりみんなで集って考えたり、みんなで共に作ったりそういうひとつの新しい作り方、住まい方も提唱している。

 

そのように見て極めて未来的な考えだというふうに思います。そしてそれは、それぞれの地域で可能なあり方、許されたあり方があるのだというふうに思います。その普遍的、人間的なバウビオロギーということを、今回お話ししました。25の指針からいきますと、他にも考慮すべき問題がいくつもあります。また、そのことをお話しする機会があればと思いますが、今回の映像を通してみなさまの日頃の暮らし方、あるいは日頃のモノづくりの考え方の参考になればと思います。

 

 


 

バウビオロギー新25の指針 2018

 


 

「バウビオロギー講座」全6回に渡り、ご視聴いただきありがとうございました。

 

最後に石川先生と弊社との出会いについて語ってくださった特別編もぜひご覧ください。

 

バウビオロギー講座【特別編】

 

 

講師プロフィール

石川 恒夫(イシカワ ツネオ)

1962年東京生まれ。早稲田大学大学院修了。ミュンヘンエ科大学留学、前橋工科大学工学部建築学科教授。日本バウビオロギー研究会代表。2004年大学発べンチャー(有)ビオハウスジャパンを設立、2011年に日本人初のバウビオローゲIBN資格取得。建築家として幅広い設計にあたる一方、日本におけるバウビオロギーの第一人者としてドイツと日本を結ぶ活動を多岐にわたり取り組む。

日本バウビオロギー研究会

 

 

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バウビオロギー講座①「第三の皮膚

バウビオロギー講座②「サスティナブル

バウビオロギー講座③「光と色彩

バウビオロギー講座④「次世代を見据えた家づくり

バウビオロギー講座⑤「ベトナムの事例

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