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【動画】バウビオロギー講座④「次世代を見据えた家づくり」|石川恒夫

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    バウビオロギー

 

どのような住まいがバウビオロギーの考えを反映しているのか、自然素材を使っていればそれでいいのか、そういった様々な問いが上がってまいります。そしてもちろん、現代の日本の中で、限られた資本の中で、そしてまた場所的な特性を踏まえた上で、どのようなことが可能かということで、一つの事例をお話ししたいと思います。

“生命の木の家”=ビオキューブ

「次世代を見据えた家づくり」という形で“生命の木の家”=ビオキューブと名づけたもので、少し時間が経っておりますけれど、これは埼玉県の大宮の方ですが、ほぼキューブ状の三方が北側の全面道路になります。三方がふさがっている場所でして、その中でご家族4人の皆様がお過ごしになる住まいになります。

当時は、三十代ご夫婦で、まだ赤ちゃんと小さなお姉ちゃんがいるお住まいで、三方が囲まれていると言うこともあり、2階が生活空間(リビング、ダイニング、キッチン)となるいわゆる逆転型のプランになります。

 

下が12坪、駐車場に2台分のスペースを取っている関係で、2階の生活空間が15坪、そしてロフトが7.5坪強のスペースになります。この写真にあるように、6畳大の大きさのバルコニーが付いていて、それによって2階でありながら生活が外に滲み出るようにと言うような形で考えたものになります

 

これはお客様のコメントで、当時2歳のお姉ちゃんは、はだしで駆け回り「気持ちいい、きれいね」が口癖になった。「太陽の光で起きる、朝がすごく気持ちいい」これはご主人様のコメントで、新築特有の匂いは全くなく家に馴染むのが早かったですと、この家は人に近いというか、そういう感じがしますと。新築特有の匂いというのは不思議な表現でして、じゃあ新築特有の匂いって何の匂いってなんだろうと思いますね。

 

それが例えばヒノキの匂いなら、それはそれで素晴らしいかもしれません。でもおそらくここでいう新築特有の匂いというのは、接着剤のようなシンナー系の匂いがするようなそういうことを指しているのだろうというふうに思います。というのはもちろん、ここではそのような接着剤関係はほとんど使っていないからですね。そして、およそ30坪の土地ですが、その中でロフトを除きますと27坪の空間ですが、それが空間としては広がりをもって今日で言う約坪80万程度の物件になります。

 

そのポイントの1つは、まず新しく子供が生まれて家を作りたい、欲しいね。という方は30代でしょうか。そうすると、やはり当然そんなに潤沢に資金が用意できるわけではない。でもやはり子供にも安全安心な住まいを持ちたいという方が多いのではないでしょうか。そうすると、全部木の家、自然素材というのは、自然塗料を使って高くつくよね。というのがよく聞かれるコメントになります。「高くつきますよね」と言って、「じゃあ諦めますか」と言うのは変な話で、もちろんその人によっては1千万2千万の車に乗るということを全く不思議に思わずそれに投資する方もいらっしゃる。

 

お金をどういうふうに使うかっていうのは、その人の価値観の問題でもあります。でも一方で、私達建築の関係の人間としては、やっぱりいかに安くいいものをご提供できるかといったことが問われます。

 

自然素材のプレファブリケーション

その一つの解法として、自然素材を用いながらもプレファブリケーションするという考え方です。それによってエコロジー(環境)とエコノミー(経済)を両立させていきたいというふうな考え方になります。

 

これは何か一つのパターンで同じものを大量生産するということではなくて、そのプレファブリケートする、事前にあらかじめ作っておく、パネルは一つのサイズとして考え方は同じですが、それで真四角のものを作るか細長いものを作るかいうのはまったく自由で、その場所、住まい手の方のニーズによって当然変わってきます。これはその1つの例であり、あるいはまた違う場所でプレファブリケートされたシステムになっていますが、場所によって当然違ってくます。

 

それから2番目には脱既製品ですね。自分たちの技術で何か作れないか、カタログから選んでこれにしようということではなくて、つたなくても何か自分たちで作るそのような創造性、ということを実現できないか。それから3番目としては、身近な自然素材を地元の工場で部品化する。もちろん、一般の流通材で特殊なものを特注でこしらえるのではなくて、規格材を使って組み合わせて地場の材料を地元の工場で作る、加工場で作る、それによってその輸送距離の問題をなるべくクリアしていく。それから4番目には現場でその工場でパネルを作る、パネルを寝かせた状態で作ってそこに断熱材などを組み込むことによって工期が短縮になる。

実際、ここではセルロースファイバーを吹き込んでいますが、100枚程度のものを実際5時間程度で吹き込むと現場は一切汚れません。そのような形で現場になるべく余剰を生み出していって、それが結果的に環境や社会、そして未来に還元するというような考え方に基づいております。

 

具体的に自然素材のプレファブリケーションとしては、すべて大壁で、ボードで覆い隠すということではなくて、真壁あらわしにして、その構造の骨組みを目に見えるようにすると、実際それによって何か歪みが生じてきてもすぐ対応できるように骨組みを隠さない。そのようなことから、パネルを実際にこれはモイスを使ってフラットな状態で断熱材を吹き込んで一つのパネルにしたもので、それをクレーンで積んでいって、軸組のところにはめ込んでいくと。

 

基本的には屋根においても同じことですが、いろんなディテールの詳細はありますが、ツバをつけておいて、骨組みに所定のビスを留めていくという形で、それが組まれた状態になると、内装は場合によっては完成してしまう。そのような形である程度安定した、まさにプレファブリケートするので寸法的な安定性、あるいはその性能としての安定性を確保した上で現場に持ってきて、それをそこで吊りおろしてはめていく。大工さんの高齢化の問題なども考えて、このような形で実際にこれが作られています。

そしてもちろん構造的な安全性の担保もした上での話ですが、あるいは屋根においてはこのような細かい間柱材のようなものを全部ビス打ち、釘打ちによってパネル化して、同じように屋根にクレーンで吊りおろす。そのような何らかの形で、しかも糊などを使わないような形でパネル化して、それを現場で組んでいく。ヨーロッパの、今のドイツ、オーストリアを見ましても、もっと長いスパンでプレファブリケートして、それを現場で要するに乾式工法で現場の省力化を図るといったことが多々見られます。

 

もともと長く強く真っすぐな材を得にくいヨーロッパの森林環境において、小さい材料を何とか剥合わせてくっつけて、集成材の文化が生まれ、そしてそれを繋ぎ合わせて一つのパネルを作っていく。それを組んでいくということは、ヨーロッパの人の一つの思考回路としては極めて自然なことであろうかと思います。けれども私たちはそれを軸組工法という、私たちの慣れ親しんでいる在来の組み立て方を尊重しつつ、そこにその断熱あるいは壁の仕様を規定していく。

 

今回のこの物件の場合には、4寸×5寸の長方形断面の柱を用いることによって壁厚をなるべく断熱性能をその分で付加すると、実際外側に付加断熱のウッドファイバーを付加しています。そのような形で壁厚をなるべく多く取るというようなことをここでは試みておりました。

 

自然素材のプレファブリケーション

人体の健康に害を及ぼすような揮発性あるいは放射性のある建材は用いないで、結果的にはそういった意味では単純なキュービックな形になっています。国産材を使う、あるいは杉材を使う、アカマツの栃木の床材を使ったりして、実際に検証としては居住環境を温度や湿度をとっていくことによって、ある程度安定した湿度環境が得られるということも確認しております。

様々な自然塗料であるとか、木質繊維板のウッドファイバーの断熱材であるとか、あるいは羊の断熱材であるとか、あるいはセルロースファイバー(古紙再生)であるとか、あるいは電磁波対策として低周波の電場を逃がすスパンボンドのようなものなどそういったものを使っていく中で、淘汰されつつ安定的に使っております。

また、ゴミを出さない住まいづくり、本当に、私たちが今ただ早くつくろう、安くつくろうと言ってベニヤや合板、あるいは石膏ボードでバンバンバンバン止めていくことは可能です。けれども実際に自ら経験して、本当に石膏ボードを解体するとき木っ端微塵になって粉々になって、それを誰が処理して誰がどういう風にこれを片付けてくれるのかということを考えたときに、あるいはもう数十年前のベニヤがペラペラになってですね、本当に糊のように薄紙をはがすようにそのベニヤをはがしていて、それを誰が後処理をするのか、次の子どもたちや孫の人たちにあとよろしくねって言って、私たちは「安くできていいものになった」というふうに喜んでいていいのでしょうか?

というようなことから、石膏ボード、あるいは合板をなるべく使わないような、そのような形で現場での作業を軽減するようなことも、プレファブリケートすることの意味になります。ここの数値はとても細かいのですが、実際にここで27㎥(立米)ほどの木材を使う。そしてここには外材等はベニヤも一切使っていない。それによって製造エネルギーはどのくらいここで用いられているのか。もしこれがベニヤと石膏ボードでビニールクロスを貼ったらどのくらいになるのかといったことの数値的なシミュレーションをすると、だいたいなんと大きな製造エネルギーのことを考えましても、数十倍の開きが出てまいります。

 

ですから単にそのランニングで安くついた、あるいはランニングはコストエネルギーがかかりません、ということだけではなく、本来は製造エネルギーの観点から廃棄のことまで含めて、ライフサイクルと言います。その視点をもって建物を評価することをしなければならないのではないかと思います。

 

コンパクトに作る

そして、単純な形状も、これはヨーロッパで省エネ建築を考え出す90年代に、まず極めて大事なことはコンパクトに作ると、それによって表皮外皮が小さくなる。同じボリュームでもくねくね入り組んだものを作りますと、当然表皮が大きくなる。そうすると、そのボリュームに対して外皮の数値がどんどんどんどん高くなってしまいます。コンパクトに作るというのは、そのボリュームに対しての外皮が値的にはどんどん小さくなる。省エネを考える上ではコンパクトに造るべし、と言うようなことが90年代ドイツではまず言われておりました。

そういった意味で、この都会の30坪の土地の中で、もちろんそのヒダヒダをたくさん作るようなことは元々求めることもできませんが、コンパクトに作る、しかし豊かな空間を作る、それがまず私たちの実務者にゆだねられた課題なのであろうというふうに思います。

実際にヒダヒダがあった方が、空間がいろいろ楽しいよね。ということもあります。でもそれはやっぱりその空間に足をすくわれてしまうことになります。本当に単純で、その方が後々メンテナンスをしやすい豊かな空間を作るというのが職業としての責任かなと思います。

 

実際にそれを考えていくと、やはりランニングエネルギー消費においてもコンパクトな方が実際に数値的には節約の方向に向かうということも、かつて研究で試みたことでありました。その分、小さな空間で大きくつくる、個的な空間と家族のつながりを大切にする、それはその上下であったり、左右であったりもしますけども、今コロナの時代にあって、在宅勤務を考える上でも、あるいは家族が家族と繋がる、社会と繋がるといったことも、その個の空間とか、家族の繋がりということも、この空間のデザインにおいては大きなテーマでありました。

 

手仕事を取り入れる余地をのこす

そして、光と風を導く、お客様がお話されたように、朝の光に目覚めると。今はそのブルーライトのような問題で、夜に仕事をして、ホルモンのバランスが崩れるようなことが、しばしば若者の中にも起こっていますが、その朝の光が私たちを覚醒させる。それは人間としての第一歩の重要な営みではないか、というふうに思います。

 

そして、手作り仕事。私たち人間誰もが上手かろう下手かろうですね。何か自分で編んだりあるいは刻んだり削ったり、トンチンカン何かやる。そのようなことって、みんなとても素敵な顔を見せています。それを嫌々やっている人はほとんどいない。みんなやっぱりそれをやる時は本当に楽しそうにしている。それは人間が人間らしくあることの1つだからですね。

 

この場合にも、例えばお客様に参加してもらって、ここではその外の塀のようなものを作っていく。自分の外に出したその顔をお客様が、自分でコテを撫でる。そのようなことのDIYの余地を残すと言うためにも、様々なプレファブ化をすることから、単純なその工法をベースにすることが効いてくると、やはりその手作りがあることによって愛着が出てくるというのはいうまでもありません。

 

して、ほんの僅かなスペースです。大邸宅のような長いアプローチがあるわけではありませんが、そこにその自然との環境、密接な環境の形成をするここの家をつくっていた時に、近くの小学生でしょうか、ランドセルを持って走り抜けていった子が、ちょうどここは7軒ぐらいの住宅が並んでいる所でしたが、ここの家木で家を作っているよと。それはちょっと笑えないような話でして、じゃあ一体何で作るんだということになります。実際に木で軸を組んでつくっていくということが珍しいことになってしまったら、私たちの建築文化としてはとても困ったことになるのではないでしょうか。

 

そしてこの外壁、その緑の植栽に対して赤、目線のところは自然塗料で、その少しビビッドな色を塗って、その私の家ということを大っぴらではないのですが、少しアピールするような色彩を与えています。

 

自然で地球環境に溶け込むような空間づくり

まとめますと、自然素材をプレファブ化、プレファブリケートするパネル工法。これは室内側あるいは外壁側でそういうケイ酸カルシウム板の一つであるモイスを使いながら、フルパネルとして地域のそれぞれの加工場でパネル化をして、上棟時にクレーンで設置する。その目的っていうのは自然素材で作ることの安心安全それからもちろん、耐震的な地震への担保である、あるいは工期短縮をするそれからコストを削減する、しかもゴミを出さない環境負荷を軽減する。

 

ここでは工場でも断熱を組み込む、場合によっては窓もそこに組み込んだりもします。それによって気密などを確保する。自然で地球環境に溶け込むような空間づくりを目指しております。100%の国産材を用いて柱梁あらわしの新壁とすると、それから外部は例えば杉を貼る、あるいは金属板を貼ってもいいのですが、自然塗料を施す、地域の中で仕事をする、地域の材料を使う、地域の工場と連携する提携する、地域の職人さんと連携する。そのようなことが一つの意図であり、その部品のプレファブリケートというのは手作り仕事を逆に活かすと、既製品から脱することの一つの手立てであると。

 

実際にキッチンなんかもですね。ほとんどの場合、このからみでは既製品を使うことはありません。洗面化粧台もしかりですね、あるいは建具もそうです。建築を通して、住まい、地球の健康、あるいはその人の健康へ志向するもので、それはそういう人たちが集まって共に知恵を出し合って一つの物件を作る。そのこと自体に意味がある、そう考えております。一つの国内での様々な努力、営みがあるかと思いますが、一つの事例を紹介させていただきました。

 


 

バウビオロギー新25の指針 2018

 

講師プロフィール

石川 恒夫(イシカワ ツネオ)

1962年東京生まれ。早稲田大学大学院修了。ミュンヘンエ科大学留学、前橋工科大学工学部建築学科教授。日本バウビオロギー研究会代表。2004年大学発べンチャー(有)ビオハウスジャパンを設立、2011年に日本人初のバウビオローゲIBN資格取得。建築家として幅広い設計にあたる一方、日本におけるバウビオロギーの第一人者としてドイツと日本を結ぶ活動を多岐にわたり取り組む。

日本バウビオロギー研究会

 

 

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バウビオロギー講座①「第三の皮膚

バウビオロギー講座②「サスティナブル

バウビオロギー講座③「光と色彩

バウビオロギー講座⑤「ベトナムの事例

バウビオロギー講座⑥「自然素材

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