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【動画】バウビオロギー講座⑤「ベトナムの事例」|石川恒夫

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    バウビオロギー

 

バウビオロギーの住まい、あるいは建物の事例として、海外の中から1つお話しさせていただきたいと思います。私たちは日本での活動として、“住まいづくり”が一つの大きなテーマであります。ただ、それは住まいに限定されたことではなくて、第3の皮膚は当然不特定の方が利用する皮膚であってもしかるべきで、その意味においては住まいだけに限定されるわけではなく一つのコミュニティを作る、そのような場所も当然それに該当します。

“カムタン コミュニティハウス”

今日お話しするのは、私ども大学で6年ほど前から国際交流の関係でベトナムの中部ダナン、ダナン工科大学と協定を結んで、毎年私は1回ほど現地にお邪魔している関係から、そのダナンの近くのホイアン、世界遺産にもなっている、かつ日本の江戸時代に交流があった場所にある一つの建物です。

 

 

これは実際に設計者がどういう考えで造ったか、ということはよくは存じていませんし、また、そのバウビオロギーということを考えてというようなことではないと思います。けれども実際、結果的に生み出されたものは単純にとても気持ちがいい空間であると。

 

 

それは理屈抜きにとても快適なその場所、として記憶に刻まれたというようなことから、今回お話したいものになります。「カムタン コミュニティハウス」です。自然のメカニズムと、住まいの柔らかい呼応を見ることができることがその理由になります。

 

バウビオロギーは普遍的で人間的

ベトナムですが、これはクリモグラフ、これはよく使われますように、その場所性を読み取るひとつの手立てとして、年間の平均気温湿度を一つの一筆書きにしたものになります。日本の場合には、地域性が豊かですから、北海道から南の九州沖縄に至るまで、さまざまな一筆書きが描かれるということで、多様な環境を私たちは持っているということがあります。

 

 

一方、ちょっとこれは絵が見にくいのですが、ベトナムのクリモグラフをちょっと重ねてみますと、ベトナムも実は日本と同じように南北に長くて、中部のダナンに対して、南のホーチミン、北のハノイによって多少当然違うわけですが、見てわかりますように、こんなにかたまっているというのは、とても湿気があって、かつ温度が高い、要するに高温多湿、いわゆる蒸暑気候の典型的なところになります。大体平均で北と南で24度から28度ぐらいの平均気温になりますから、沖縄でも23度ですから当然暑いということはわかります。

 

 

バウビオロギーというのはドイツに生まれ、育まれていますが、ドイツに限定されるわけではもちろんない。ホルガーケーニッヒさんの「健康な住まいの道」を見ますと、日本とドイツ、当然民族も違う、場所性、気候も違う。でもなんてこう普遍的なことがここに多く書かれているのだろうと思いました。そういった意味ではもちろん場所場所で違うことはありますが、多くのことをバウビオロギーは、普遍的な人間的なものであると言うような観点に立って考える必要があります。

 

そして、このクリモグラフで見たときに、実際に私たちの気候風土と違うということは明らかです。だから関係ないということではなくて、かつ現状、日本でもどんどん温暖化が実際、現実に桜の開花を見ても一昔前と全然違う。自然のイメージを考えますと、このベトナムでどのようにこのつくり方が実際に実現されているのか、そのことを知ることは決して無駄にはならない、というふうに思いました。

 

自然素材からなる循環システム

実際に学生さん、あるいはダナンの工科大の先生方も一緒に訪ねていった折に、第一印象は外がグレーのこのような外装で閉じた印象がありました。コミュニティハウス、ある土建築の欧文の書籍に元々あったので、このことを知っていたのですが、この平面図を見ますと公民館(コミュニティハウス)というのは自治会館みたいなものです。公民館みたいなものであって、ああ、これをみるとここにカフェテリア、それからライブラリー、当然日本でいう公民館で喫茶店があって、図書コーナーがあって、それで何か集会室があって、そういうことだなとイメージしていました。

 

 

それこそ公民館だったらここに喫茶店があって、お茶を飲めるのかなと。スタバは入ってないだろうな、みたいな感じに思って楽しみにしておりました。実際に訪ねて行って、今のように見ていきますと、ここには実は、ここがそのエントランスの部分になって、ここがそのカフェテリアのコーナーだったんですが、実際には何にもなくて、倉庫のようにがらんとしてたところでした。ライブラリーと図面では書いてありましたが、実際には本箱が2つ3つ並んでいて、というような状況でまったくの自分がイメージしていた公民館とは違ったものだったのですが、実際に中に行きますと、とてもすごく気持ちのいい空間が広がっていた。訪れたのは2年前の3月でしたが、もうその時点で30度を超えていたと思います。半そでで汗が出るぐらいの外の気温だったというふうに思いますが、開けてもらって中に入りますと本当にヒンヤリとして静かな気持ちのいい風が流れている。

 

この写真に見てわかりますように、ここは中庭がありますが、ガラスは一切なく、外側がクローズされた要素を持っていますが中は実際に開けっぴろげの空間であって、要するに外も中もないようなひとつの空間になっています。ただの高窓があったりとか、建具がヨシズのようなものから作られていて、土を薄く塗っていたりして、実際には空気が流れるようなそういう素材になっておりましたし、これは実際にはコンクリートブロックかと思いましたが、日干しの土のブロックになっていまして、骨組みが竹とか丸材、丸太のようなもので、縄で縛って、あるいはそのコミセンのようなものを竹で作ってというようなもので、極めてローテクノロジーで作られている。

 

 

子供たちが午後14時15時ぐらいなると集まってくるので、いつもその時間に開けているのだと。何にもないように見えますが、ここで遊んだり、あるいは卓球台はありますし、もちろんそこで本を読むこともありますし、結婚式をここでする、そのようなことも使われているようでした。

 

 

外側がクローズになっているのは、ベトナムは秋から一時期雨期になって雨がかなりそれなりにまとまって降るので、いわゆる防風防雨対策としてクローズした壁面を作って中に対して開くということになっております。この屋根はココヤシの葉っぱで葺いてまして、これはここの場所だけじゃなくて、近くにあるリゾートホテルでも葉っぱでいわゆる茅葺きのような草屋根で作っているホテルの施設なんかもあります。

 

 

私たちの今の感覚からすると、5年、10年して腐っちゃうだろうと心配してしまうものですが、まだ実際にこの近くに行くとココヤシの葉っぱで屋根のパネルのようなものを作っている家内工業的な人たちが実際いて、その壁に立てかけてあるのを見たりしますと、まだそういう手仕事が一つの経済を回している、そういったことが十分可能な、供給が可能なような体制にあるということが見てとれて、そのような中で草屋根が使われているということを知ることができます。

 

 

風を受ける、流す、止める、逃がす、それから日照の制御で、雨水はこの下に一応の地下ピットを貯めて、それを散水に回すとか、そのような循環システムが施されている。この中庭の草花によって日射を遮蔽する、あるいはこの三和土のような土間によっていわゆるその一つの熱を蓄えると蓄冷するような冷輻射を利用するような形でこの建物が構成されていることが分かります。

 

コンストラクション/デコンストラクション

これはその設計事務所(1+1>2)のコンセプトとしてホームページから得たものですが、まずここにそのコンストラクション/デコンストラクション、要はここに自然の姿があり、建物ができて行って、またここに自然に戻るというそのライフサイクルの視点が極めて明快に描かれております。建物になる、それがまた元に戻ると言う。それがどこか他のところに埋め立てや燃やすという、他のオープンエンドにはならないのだということが、この表からこの絵から見て分かります。あるいはここにローカルのウッドそれからバンブー竹それからココヤシの葉っぱ、アドビというのは土のブロックですね。それらがみんなローカルの材料であり、リサイクルができて、また元に戻る。もちろん毒性を放つものがないという意味で、みんなここに丸がついております。

 

 

また、ここの横長のもの、この現場で使われたものは、葉っぱ、土、石、コンクリート、木材それから、金物、金属であって、こちらの集成材であるとかガラスとか、金属とかPVC塩化ビニールあるいはそのポリそれからアルミというものは全然使われていないと。要するに製造エネルギーがかかるものは、ここでは一切使われていないのだということが見て取れます。

 

 

このシルエットから、この断面で雨期には素で水をためて庭のワインヤードとか、ワインの庭にそれを回していくというようなこと、あるいはまだ私が行った時には完成されていませんでしたがそのワイナリー的なワインの畑の草による日除けといったものも、その自然の力を利用した日射遮蔽としてここで使われていることが見て取れます。

 

 

この総体として見た時に、彼らはこの設計者はバウビオロギーということをたぶん存じてないだろうと思いますが、結果的には今ここでライフサイクルの問題は製造エネルギーの問題、それから日射あるいは冷輻射、日射制御輻射の利用等々によってその自然の力を利用する、あるいは自然のメカニズムとその居住空間がやわらかく対応しているということにおいてバウビオロギー的な評価をしてもいいのではないかというふうに思いました。

 

心身の健康と環境との調和

バウビオロギーの目指すことというのは、ドイツから始まったとしても、今世界に広まりつつあります。通信教育をしているのは、イタリア、それから、スペイン、フランス、そして日本。日本は3番目でした。それから今、英語圏でも一応可能にはなっています。オーストラリアにもバウビオロギーの人がいます。アメリカにもカナダにも広まりつつあります。そこではすべて「環境や健康に配慮した住まいづくり」といったことがテーマになっている。

 

「Bau-Bio-Logos」その建築とその生命、そしてそれが秩序立って一つの宇宙生命としての私たち人間が、健やかに生きるためのすべを語っている。つまり人間はひとつの生命体であって、地球という大きな自然環境の中でどのような住まいづくりがこの環境と調和して次の世代に渡していけるかと言うことができるのか、それを考えていくひとつの手立てがある。それは気まぐれなことではなくて、ひとつの秩序としてロジックとして語られていることにすごく未来的なものを感じます。つまりは、その場所場所によってそのアクセントは当然異なっていいからです。

 

バウビオロギーは自然素材をただ使えばいいと、あるいは太陽光のソーラーを屋根に乗っければいい、というような断片的なことだけではなくて、気持ちのいい空間、あるいはその暮らし方、もちろんそこで少ないエネルギー消費があれば、それにいうことはない。

その両立を求めていて、心身の健康と環境との調和を考えた住まいづくりを目指していくのだと言うことをお伝えしたく、ベトナムのひとつの事例を紹介させていただきました。

 

 

 

 


 

バウビオロギー新25の指針 2018

 

講師プロフィール

石川 恒夫(イシカワ ツネオ)

1962年東京生まれ。早稲田大学大学院修了。ミュンヘンエ科大学留学、前橋工科大学工学部建築学科教授。日本バウビオロギー研究会代表。2004年大学発べンチャー(有)ビオハウスジャパンを設立、2011年に日本人初のバウビオローゲIBN資格取得。建築家として幅広い設計にあたる一方、日本におけるバウビオロギーの第一人者としてドイツと日本を結ぶ活動を多岐にわたり取り組む。

日本バウビオロギー研究会

 

 

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バウビオロギー講座①「第三の皮膚

バウビオロギー講座②「サスティナブル

バウビオロギー講座③「光と色彩

バウビオロギー講座④「次世代を見据えた家づくり

バウビオロギー講座⑥「自然素材

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