【豆知識コラム】断熱材の種類と歴史
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環境問題
4月も後半となりました。
新入社員が入ったり、新しいプロジェクトが動き出したりと変化の多い月かと思います。建築業界において大きな変化といえば「省エネ性能表示制度」がいよいよ開始したことでしょうか。
販売・賃貸事業者が建築物の省エネ性能を広告等に表示することで、消費者等が建築物を購入・賃借する際に、省エネ性能の把握や比較ができるようにする制度です。住まいやオフィス等の買い手・借り手の省エネ性能への関心を高めることで、省エネ性能が高い住宅・建築物の供給が促進される市場づくりを目的としています。
国土交通省HPより
断熱等級についてエネルギーアドバイザーの横山直紀さん(イーシステム株式会社 代表)に執筆いただいたコラムもご参照ください。
これまで、普段建築に関わりのない方が断熱性能に興味を持つきっかけといえば「新築を建てるとき」がほとんどだったかと思います。しかしこれを機に賃貸の際にも断熱性能について目にすることで「この家はどんな断熱材を使い、なぜこの省エネ性能なのだろうか?」「将来家を建てるならどの断熱材にしようか?」と興味を持たれる方も増えるかもしれません。
そこで今回は簡単に断熱材の種類と歴史についてご紹介いたします。
断熱材の種類
断熱材には鉱物系、発泡プラスチック系、木質繊維系、天然素材系などがあります。それぞれに代表されるものの材料や特徴は次のようになります。
鉱物系
■グラスウール・・・主にリサイクルガラスを繊維状に加工したもの。耐火性に優れ安価で、最もスタンダードな断熱材。
■ロックウール・・・玄武石や天然岩石が原料の人造鉱物繊維。耐火性と吸音性に優れている。
鉱物系のデメリットとしては、湿気に弱く壁内結露するとカビが発生し建物の劣化や健康被害に繋がりやすい。
発泡プラスチック系
■スタイロフォーム・・・ポリスチレン樹脂使用。軽くて扱いやすいが、防音効果は低く衝撃に弱い。
■ウレタンフォーム・・・ポリウレタン樹脂使用。耐水性、遮音性は高いが、耐火性が低い。
木質繊維系
環境に優しく、透湿性に優れているのが特徴だが、値段が高いのと施工技術が必要なのが現状の課題。
(イケダコーポレーションで取り扱っている木繊維断熱材シュタイコは下記のウッドファーバーにあたります)
■セルロースファイバー・・・古紙を再利用して作られる。振動などで沈下しやすく断熱効果が弱まる場合がある。
■ウッドファイバー・・・製材時の木材の端材を利用。比熱容量が高く沈下しにくいが、2024年時点国内生産はなくセルロースよりもさらに高価。
ほか天然素材系で羊毛、炭化コルクなどもあります。
デメリットも記載しましたが、断熱材は日々研究&改良されており、製造メーカーによって成分など異なるためあくまで参考です。また壁内結露や沈下などは、業者が正しく施工していれば十分に防ぐことが可能です。
断熱材の歴史
断熱自体は遥か昔から世界各地で、その土地の気候風土に合わせて行われてきましたが、「断熱材」として普及し始めたのは1880年代にヨーロッパでロックウールが使用されてから。その後、1910年代にグラスウールが船舶の断熱材として使用されたり、1950年代にはセルロースファイバーや発泡ウレタンがアメリカで開発され、日本の建築にもどんどん利用されるようになりました。
転換期となるのが1973年と1978年の2度にわたるオイルショックです。石油価格が高騰し、日用品はもちろん寒い冬の生活に大打撃を与えました。
「灯油を節約しながら暖かい家に住むにはどうすればいいか?」ということで家の断熱に注目が集まり、1979年に省エネ法が施工。以降、新素材や断熱効果の要である気密性の研究などが進み、今日の高気密高断熱な建築に至ります。
技術の発展の裏にはこんな事件もあります。
断熱材による人々への被害で有名なものが「アスベスト」です。アスベスト(石綿)は不燃・耐熱性、耐薬品性、絶縁性、耐蝕・耐久性などが非常に優れ、19世紀に発見されて以降、建築だけでなくさまざまな工業にも盛んに利用されました。しかし加工時に空気中に舞った石綿を吸い込んだことによる健康被害(肺がんなど)が報告されてから徐々に規制され、2006年に全面的な使用禁止となりました。
また1973年の第一次オイルショック時、厳しい寒さの北海道では当時主流であったグラスウールの断熱材に倍ほどの厚みをもたせ施工しました。しかし気密性が十分でなかったことから断熱材内部で結露が発生、カビはもちろん「ナミダタケ」というキノコが繁殖し、その結果床が腐り落ちるといった事例が相次ぐ「ナミダタケ事件」がありました。
こうした被害を踏まえ、現在の安心安全な素材での高性能省エネ住宅に繋がっています。
木繊維断熱材の誕生
さて、そのような歴史のなかで木繊維断熱材が生まれたのは1992年ドイツ。なんだか思っていたより最近で意外ではないですか?それはおそらく白川郷を代表する日本での伝統建築「茅葺き屋根」を見慣れているからではないでしょうか。日本では昔からオガクズやもみ殻などを壁に詰めて断熱材として使用してきましたが、ススキやヨシなどを用いた茅葺き屋根は、断熱効果はもちろん通気性や吸音性にも優れた木質断熱材の祖先と呼べる存在です。和風なイメージですが、オランダやデンマークなど海外でも昔から利用されてきました。
そんな茅葺き屋根の良いところをさらに断熱材として高性能に、そして使いやすく加工されたともいえる木繊維断熱材シュタイコは、「断熱材の種類」でも記載した通り初期費用としては高くつきます。しかし、優れた透湿性から壁紙や柱の木材などのカビ発生リスクが低く、それに伴う今後何十年のメンテナンス費用、また高い断熱性能から得られる省エネを考慮すれば、トータルコストでは決して高くなく、かつCO2固定化で環境にも配慮された資産価値のある住まいづくりが可能です。
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