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とうほく走り描き‖第5回 『古民家再生、市民の手で』

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とうほく走り描き5回イラスト

左官ワークショップの様子と、豊田さん

第5回 『古民家再生、市民の手で』

豊田 喜幸さん (豊田設計事務所

10月12日、地元宮城の松島ハーフマラソンに出場した。今年で38回目、ハーフ(約21km)、10km、5kmの3 種目で約8000人が走る人気レースだ。日本三景のひとつ・松島海岸に並行するコースは、リアス式海岸の延長で上り下りを繰り返す。距離は短いが、脚力を試される難コースだ。震災から3年、コースの山側にあるJR仙石線がいまだ復旧しない一方で、建設途中の高速道路の巨大なコンクリート橋脚に、目を奪われる。

 

松島海岸から、200km南下した福島県いわき市に、豊田設計事務所がある。主宰は、古くからのお客様であり、友人でもある豊田善幸さん、気密・断熱オタクとして知る人も多いと思う。震災後は、津波で被災した一軒の古民家の再生に、文字通り「手づくり」で取り組んだ。「直してみんかプロジェクト」のタイトルのもと、地元の職人の協力も得てワークショップを開催。いわき市中之作という小さな漁師町に延べ800人が訪れ、素人集団が手仕事で改修工事をすすめたのだ。塗り壁などは、竹小舞の縄を編むところから、土をこねるところからやるという徹底ぶりだ。通常、古民家の修復には膨大な費用がかかる。本格的に左官工事をしようとすればなおさらだ。さらに、職人不足が日々の話題となる昨今、土コネ、竹小舞づくりから、全てプロにお願いするのはまず不可能だ。困難な状況を逆手にとって、「ひとの力」を最 大限活用しての古民家再生。

 

多くの人たちが再生に携わり関係者になってもらうことが、建物を永く残す要素になる、というのも豊田さんの考えである。そうして修復された古民家「清航館」は、毎月さまざまなイベントで使われ賑わっている。イベントの企画・運営も清航館の関係者となった人たちが「使ってみんか事業部」として進めている。これからも、中之作にどんどん新たな人のつながりが広がっていきそうだ。 松島の高速道路橋脚のコンクリートと、中之作の古民家の土塗り壁。津波被災地では、否応なく、あらためて「ひと」と「建築」との関係を考えさせられる。自分の足だけで長い距離を走るマラソンは、走るたびに自分のサイズと土地のサイズを強く感じさせる。走ることで、建物や風景を見るときの感じ方も変わって来ているのかもしれない。

 


〈筆者プロフィール〉

中島信哉:株式会社イケダコーポレーションの営業として、
現在は東北6県と北海道を担当。仕事のかたわら始めた
サインペン画やマラソンが話題に。

中島さんプロフィール画像


 

【2014年11月 北海道住宅新聞掲載】

 

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