とうほく走り描き‖第50回 『体感を言葉で伝える息の長い取り組み』
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コラム
第50回 『体感を言葉で伝える息の長い取り組み』
高橋 純一さん (株式会社イディア)
一般に「夏涼しく、冬暖かい」とされる高断熱住宅。その心地好さを、言葉で正確に表現することは難しそうだ。賃貸マンション暮らしの私も、実感したことがなく、自信が無い。夏涼しいがひんやりはせず、冬暖かいが火照るようなこともない「ストレスの少ない室温」とでも言えば、実際に近いのだろうか。
山形市で、サッシや断熱気密部材の販売を手がける株式会社イディア・高橋純一社長も「取引先の工務店様が建てる住宅を、全て高断熱住宅にするのが夢だが伝えるのが難しい」とプロの建築業者でも高断熱に関心が薄い人がいる現状を嘆く。私が「自然素材に囲まれる居心地」を伝える苦労にも似ているようだ。
二十代の若さで会社を引き継ぎ、新規開拓を考える中で新住協と出会い顧客を増やしてきた。会員の工務店さんが、断熱に熱心なのは当然だが自然素材にも理解があり、リボス自然健康塗料・天然スイス漆喰のご採用も多い。言葉で伝える難しさがある一方、感覚としてわかる人もいるものだ。
マラソンの魅力も言葉にしづらい。リラックスするような、自分を追い込んでいるような、でもそのどちらでもない「ストレスの少ない時間」である。山形の名物は「芋煮」長期保存しにくい里芋と、冬を越すのが難しい老いた農耕牛を合わせて食したのが始まりとも言われる。山形の暮らしには「もったいない」が日常感覚としてあるようだ。
高橋さんが自宅を断熱改修したのは、東日本大震災の翌年。当初は建て替えを考えたが、あらためて床下を点検すると意外に状態がよく「もったいない」と改修に変更。家業を継ぐときも、先代の残したトラックや工具が「もったいない」という思いが後押しとなった。
この夏は記録的な猛暑、山形も厳しい暑さだ。この暑さが「もったいない」(省エネ)を刺激すると高断熱への関心も自然に高まるかもしれない。
〈筆者プロフィール〉
中島信哉:株式会社イケダコーポレーションの営業として、
現在は東北6県と北海道を担当。仕事のかたわら始めた
サインペン画やマラソンが話題に。
【2018年8月 北海道住宅新聞掲載】