とうほく走り描き‖第22回 『OBユーザーを大切に28年』
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コラム
第22回 『OBユーザーを大切に28年』
遠藤 雅行さん(グリーンハウザー住宅事業部)
「オプション仕様」。よく聞く言葉だが、ニュアンスは幅が広い。積極的な提案で顧客満足向上につなげているケースがある一方、ほとんど実績の無いままやがてオプションから外れていく製品も多い。株式会社グリーンハウザー住宅事業部では、スイスウォールのカルクウォールが内装のオプション仕様。全室は難しいが、リビングなどポイントとなる部屋で、たびたびご採用いただいている。
事業部をまとめる遠藤部長に聞くと「ご興味いただけそうなお客様には、強くお勧めしている」とのこと。標準仕様は「うちはこれしかやりません」と言えるが、オプション仕様を勧めるには、逆に担当者の強い提案力が必要。遠藤さんの熱心さが伝わってくる。 遠藤さんが入社した時期は、バブル真っ只中。土地さえあれば建つという活況ぶりで、土地探しに明け暮れる日々もあった。しかしバブル崩壊。同社の住宅事業もモデルハウスを閉鎖し、経費を抑えた紹介営業へ転換。人員体制も大きく変わり遠藤さんが中心的な役割を担うようになった。「ある意味そこがスタートだった」と、遠藤さんは振り返る。
モデルハウスやショールームが無いのは明らかにハンデだが、OB顧客対象に、築10年目の無償点検を導入し、ユーザーとの接点を増やした。リフォーム工事も丁寧に獲得し、数字をつくる。そんな努力があり、現在は着実な受注状況だ。中小の工務店は、社長主導でデザインも仕様も思い切って挑戦できる。新たな投資などの決断も早い。その点、事業部の運営は社内のコンセンサスをつくり、取引先との折り合いも考え、かつ安定した利益をあげなければならない。工務店経営とは違った苦労がありそうだ。
アマチュアランナーも仕事や家庭と折り合いをつけながら、日々の練習時間を見つけていく。ランサークルなどでコンスタントに走れればいいが、毎回練習会に参加するのは難しい。粘り強く時間を見つけて、数十分でもウエアに着替え、ドアを開けて走り出せるかどうかで走力に差がついていくのだと思う。
グリーンハウザー住宅事業部は今春、同社社屋内に新ショールームをオープンさせる。遠藤さんが入社以来28年。社会状況や社内体制、技術の進化、デザインの流行など、環境が変わっていく中で「住宅性能のベースを守りながら、お施主様の状況に合わせて付加価値を提案」し続けてきた遠藤さんの悲願でもあり集大成でもある。提案力を存分に発揮できるホームグランドになりそうだ。私も、ウルトラマラソン再挑戦に向け、今ある環境の中で出来る練習を積み上げていきたい。
〈筆者プロフィール〉
中島信哉:株式会社イケダコーポレーションの営業として、
現在は東北6県と北海道を担当。仕事のかたわら始めた
サインペン画やマラソンが話題に。
【2016年4月 北海道住宅新聞掲載】