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第20回 (2016)|【前編】エコバウ建築ツアー報告記

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エコバウ建築ツアー2016は、ツアー開催20回目を迎えた節目の年。

 

「持続可能な発展」をテーマに掲げ、ドイツ北部、再開発が進むハンブルク、歴史とモダン建築が共存する旧東ドイツベルリンヘの旅でした。バウビオロギーの観点から木材やレンガなど、持続可能な部材を多用しながら、最新のパッシプ基準をクリアする建築の視察。

 

エコロジカルな取り組みでコミュニティ活動を続ける住民とのふれあいから、後世に残すべき建築のあり方を考え、これから進むべき日本の家づくりの姿を探す旅となりました。

 

イケダコーポレーションが発行している「ikeco Vol.26」でもレポートしましたが、別の視点から【前編(1日目〜3日目)】、【後編(4日目〜6日目)】に分けてお伝えします。

 

工務店のための専門マガジン新建ハウジングプラスワンにも特集として掲載されました。併せてお楽しみください!

 

ツアー詳細は、 ツアーレポートからぜひご覧ください。

 

 

・持続可能性のある建築
・人の多様化・暮らし方の価値観の変化
・設計・素材へのチャレンジ
・自然との共生

 

 

 

 


「新建ハウジングプラスワン vol.741」2016 11月発刊

 

 

 

ツアーレポート


 tour report

Day 1

ハンブルク

都市のキャッチコピーは、「水と緑の町ハンブルク」 「森の中の大都会」。 2011 年にヨーロッパ環境都市に指定された環境意識の高い都市ハンブルクでの視察。

 

ハーフェンシティー再開発

北と南にエルベ川が通り、元々倉庫と船を停泊するフェリーポートがあった港町。船での運送がコンテナ運送となり、大型船舶が入れず衰退した地域=産業跡地となった。“負の遺産を残さない”をテーマにこのエリアを未来の環境都市として再興させようと始まった都市整備計画のひとつ。

 

第二次世界大戦前の建物。現在は福祉関係の施設として活用。左上の高層マンションは、1960年代の建設ラッシュ時の建物でアスベストの問題等もあったという。

道を挟んで向かいには21世紀に建てられた近代建築があり、この一帯だけで、4世紀に渡る変化が見られる場所

 

▶︎20世紀後半に流行したルクサス(豪華)なデザインの建築物

 

▲ここ23年以内にできたもの

階段部分にはnachhaltige(持続的な)を意識したスウェーデン製の御影石も…

Day 2

Jan Gerbitz氏

デベロッパー視察 

ZEBAU 15年前に創業したエネルギー建築専門会社

「持続可能で健康的な建築物」をテーマにエネルギーや古い建築物の保全を主に請け負う企業。100年前の造船関係商社の建物を事務所として活用している。今回、ハーフェンシティ再開発とIBAハンブルクの取り組みを紹介。

 

ハンブルク:2020年までにCO2の排出を40%カット、2050年までに80%カットを目標とする環境都市。衰退した港湾地区が多くを占めるため、未来のシンボル都市としての再生を行う必要があり、大規模な都市再生計画をエコロジーを軸にして進めている。

 

 

「パールネックレス事業計画2000」


古い倉庫をオフィスやカフェにリノベし街並みを取り戻す計画でHafencity Hamburgを活性化する。

 

 

 

 

 

Leap across River Elbe 2001

ハーフェンシティの北部と中心部の再開発が先に進み、現在南部での取り組みが盛ん。フィッシュマーケットやフラワーマーケット跡地が続々と商業施設等に生まれ変わっている。

元々倉庫街であり工業都市であったのは歴史的背景によるもので、第二次世界大戦後北米から石炭を買わなければならなくなり、その貯蔵庫的な役割を担っていた。しかし、20世紀に石炭掘削が終わるのはわかっていたため、その後この土地をどう活かすかが長年の課題であった。

 

 

 

 

 

IBAハンブルク20062013

2022年原発撤廃と自然エネルギー活用、30%以上のCO2削減目標。エコバウ的な70のプロジェクトが6年以上に渡り取り組まれたIBAの住宅展示場。

持続可能性や、建材そのものの見方の変化。パッシブハウススタンダート(40%以下のエネルギーで暮らせる基準)お金儲けではなく、人類の持続的な繁栄のための取り組み。

 

ハンブルク環境省

設計士のザウアブルッフ・ハットン氏が設計した13階建てビル。ファサードはセラミック製。

パッシブハウスはエネルギー面にフォーカスするが、それだけでなく、ドイツ政府が推進するエコロジー建築基準であるBNB(サスティナブル建築の評価システム)150以上の基準をクリアした建造物。

元々は砂地であった土地に800本もの支柱を埋め、そのうち600本を地熱利用ができる熱交換型の支柱を採用。

 

ハーフェンシティ再開発模型

全体の模型を見ることで、いかに街全体の再生に成功しているかが分かる。

 

ハンブルク国際建築展覧会(IBA Hamburg)

IBAハンブルク20062013の見本展(住宅展示場)を視察。

世界で唯一の苔を培養した住宅。外壁に水槽を設置し、苔を培養。苔から発生するガスをバイオエネルギーとして活用する他、苔によって断熱の役割も担っているとのこと。水槽内に専用ポンプで定期的に空気を送り、苔を育成している。このような建物は補助金により設計士が建てた物件で有り、一般的には非現実的である。

可動性ソーラーハウス(スマート・マテリアル・ハウス)

外壁部に設置している羽の形状をしたソーラーが風の動きに合わせて動きウィンドキャッチャーの役割とソーラーの活用を担っている住宅。

 

 

 

 

 

Wood Cube

木部は楓の無塗装日焼けや雨水による変色も自然の経年変化として、問題ないという価値観で建てられている。一次エネルギー消費15kw以下のパッシブハウススタンダード基準性能(消費エネルギーだけでなく持続性等も基準)。

IBAの展示住宅として、環境順応建築の代表的な物を作って欲しいとの依頼から始まり「エコロジーとは何か?」から設計を始めた長く使えるモノこそ環境に順応したこれからの建築だという答え木を使う住宅へ。

木も有限ではない。ドイツのエネルギーの50%は木に由来する生産物に頼っている状態である。木は生き物であり使い方により応用も利くからこそ、しっかりと尊厳を守り、大切に使う必要がある。

 

 

外壁は木を使ったパネル工法。中心は12cmの板材に周辺を68cmの厚みの板。ねじや釘も全て木を用いた外壁材。雨は多いが、湿度は少ないドイツだからこそ採用できる材かもしれないが、持続可能性を考え全て木を使っている。

また、日本の社寺仏閣の技術の高さには驚かれ参考にしたとのこと。そして、一番このモデルで聞かれるのは防火について。ドイツでは日本のような火災は少ないようだが、ドイツの防火基準F82に沿って建築されている。とはいえ、今回のIBA住宅展示場は現実的ではない建物が多く、実用されていない建物がほとんど。

コーディネーターのケーニッヒ氏からもまだまだ本物ではないとの意見も。また、国として役人に取っての“エコ”と実際の“エコ”とには差があるとのことで、ドイツ国内東西南北によっても違いはあると仰る。

 

ウォルダーハウス森の家(ホテル&コミュニティースペース)

5階建ての鉄筋コンクリート+木造(12F コンクリート造/35F 木造)

ドイツの森林協会が建てた無垢の木のモデルハウス。森林の保護と木材使用を促すには無垢がいいとのことで無垢材のファサードが特徴の建物だった。

 

 

 

コンクリートはプレキャストコンクリート。上層階はホテルとなっている。

倉庫街の視察(世界遺産)

ハンザ同盟輸入拠点として発展した地域で、現在世界遺産地区である。約150年前からある倉庫街で今でも8割が現役で使われ続けている珍しい倉庫。当時、コーヒー豆や絨毯など輸入品を運び込んだ。レンガは日本で言う所の鎌倉時代1100年代に生まれたもので、サイズも当時から変わらない11.5×5.7cm。

レンガ造りの家や建造物は、3ヶ月に1回掃除をして綺麗に保ち、定期的に割れ等の確認や部分補修を繰り返し、34代と住み継がれ使われ続けている。

ミュージアム視察

ー倉庫街の歴史ー

・戦争時全壊した建物もあるが半分以上は修復され今も現役

・倉庫の土台の杭(13m)は木を使用

・レンガ+鉄骨造

 

ハンブルク視察でのまとめ

今のドイツでは、nachhaltige(持続可能性)という考え方を基に、省エネルギーだけでなく素材に対する見方の変化が起きてきている。長く持つ素材=自然素材、そして、その自然素材を長く持たせるためには設計段階から考えなければいけない。

降雨量が多い日本で、軒の出と水切りは必須であることを改めて実感。比較的雨の多いドイツでも建物の長寿命化のため、レンガの水切りの下端は部分塗装を施して水はけを良くしている。

Day 3

ドイツの暮らしの話

グリム伊智子氏(通訳)

・ドイツは新築戸数が年間3035万戸特にミュンヘン郊外は、若者の戸建志向が強まっている。1人当たりの居住面積も広くなっている。(主要都市周辺では賃貸の家賃が年々と上がっている)

・高齢化が進み年金問題が日本同様にある⇒打開策の一部として、児童手当を月400ユーロ450ユーロへ引き上げ。

 

 

グフタフアドルフ教会(リノベーション)見学

1905年建築のスウェーデン系の教会

40年以上エコ建築に携わっているエコテクト社による大規模改修クザンという教会建築専門の設計士)値段が高くても、自然素材と永続的な物への関心が高まっている。

Ex. オフィスビルの屋根緑化

家具も高級だがエコロジーなものを求められる。土台〜内装・インテリアを含むリノベーション⇒100年にわたり使えるようにと改修工事を行なう。杭は杉の木で3mを掘削し点検から始まる。

室内は天井・壁・サッシを改修し、空間を広く明るくスウェーデンをテーマに、白とグレーの内装にブルーをアクセントに。また、上張りされていた床を剥がして見ると1905年に施工されていた石の床が出現した。耐久性に問題がなかったのでそのままの形で使用し、できる限り元の姿へと修復することをミッションとしている。

 

15年前に聖堂内の改修。192030年代の古典的なデザインを後世の残す。このような古い物件のリノベーションは材料の同材を探すことが一番苦労するとのこと。

 

 

 

 

 

現存する元々の漆喰壁の壁画

 

ユルツェン駅見学

フリーデンスライヒ・フンデルトヴァッサー氏設計の駅

 

「建築と芸術の一体化」

人の肌の色は3色あり、その色彩にこだわった芸術家。色だけでなく、彼がエコにも関心を強く示した時代の駅。“自然界に直線は存在しない”と主張して曲線や不規則な形状を設計へ取り入れた建築で環境への尊厳が現れている。(人としての健康と環境汚染を考えた建築)現在もドイツ国内外から数多くの人が視察に訪れ建物が資産価値を高めている。

 

 

 

 

リボス社視察

製品のみならず、建物でさえリボスの理念を表現している。

 

リボス社では、原材料に食品品位の亜麻仁油を使用しており、視察時のランチでは
ジャガイモにその亜麻仁油をドレッシングとしてかけて食す光景もお馴染み。

〜車中〜

ツアーコーディネーター ホルガー・ケーニッヒ氏より

福島原発事故以前ドイツでは35基あった原発が2022年には原発廃炉へ→経済合理性とCO2削減を目的とした原発を持続する方針から福島原発事故の直後、一気に廃炉方針に転換。

①原発のプルトニウムの保存は、どこの地域も誰も望まない

②廃炉の費用は建設時の10倍

③安全対策による原発による電気代の割高

④原発は存続できない

2016年ドイツ再生エネルギー比率25%。2023年には原発なしで電気が余ると予測されている。(2021年現在実際にそうなっている。)

 

後編(4日目〜6日目)へ続く

 


 

パンフレットPDF

 

 

 Pictures 

 

ツアーコーディネーター TOUR COORDINATOR

Holger Konig ホルガー・ケーニッヒ
1951年ミュンヘン(ドイツ)に生まれる。ミュンヘン工科大学及び大学院で建築を学ぶ。
1983年にエコロジー建材店や家具工房を設立後、設計事務所も主宰し、建築家、家具職人、建材流通の多様な経験を持ち、バウビオロギー・バウエコロジーを踏まえた住宅、幼稚園、学校を数多く手がける。
主な著書としてドイツでベストセラーとなった「健康な住まいへの道」(1985年初版・1997年第9版)があり、2000年に日本でも翻訳、出版される。1996年から2001年まで、自然建築材料の建築業者の集まりであるÖKO+ AGの取締役会の議長を務める。以降もそれまでの経験を生かしたさまざまなバウビオロギーや木造プロジェクトの管理や研究を任され、現在も活躍中。

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