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第19回 (2015)|【後編】エコバウ建築ツアー報告記

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エコバウ建築ツアー報告記2015(後編)は、ドイツ・オーストリアの木造建築や改修事例物件の視察レポートです。自然素材と最新設備を融合させ、デザイン性を損なうことなく機能性も兼ね備えた建築が多く見られ、日本でも応用できるヒントが詰まったツアーになりました。

 

 ツアーレポートからぜひご覧ください。

 

・最先端のエコロジー建築
・進化型工務店の一つの形
・ジェネラリストの重要性
・エコロジー推進のバックボーン
・持続可能性ナハルティヒの本質
~これからの建築の心構えを考える~

 

 

 


「新建ハウジング」(2015年10月〜2015年12月)

 

ツアーレポート


 tour report

 

ラトケ氏の3つの建築(アウグスブルグ)

設計:フランク ラトケ氏

区画整備のシンボルである教会

 

特別誘致地区に建てられた教会と2つのオフィスビル。持続可能性を追求しながらも工期や安全性、革新性を実現している。オフィスはプレハブ工法により3週間での上棟を可能にした。新素材のブナの積層材を使うことで躯体の軽量化、約3割のスマート化を実現し、砂利による微振動の軽減を計った。

この誘致地区のシンボルとして居住エリアに一番近い位置に最初に建てられた建物。自然素材(特に木を用い祈りの空間を設ける)、既成材を使いコストダウンをしながら、特徴のある内皮、防音仕様になっている。徴的な天井による採光などデザイン性と機能性を兼ね備えている。

 

職住近接を目的とした都市計画の一環として産業誘致地区から緑の空間を隔てた先に見える居住エリア。公園を含む広大の緑のスペースで住居エリアとオフィスエリアがゆとりを持って隔てられている。

 

住宅展示場

設計:ヨハネス ダンテレ

・ギムナジウム 追加棟

・通常の建築コストで建てたエコ教室コンテナ建築並みの180万€の予算

・工期3~4ヶ月

・連邦法により教室の広さの規定がある

・消防法による数々の木造規制も500㎥の木材使用→1000㎥のCO2固定

・難民対応のため増築の可能性

 

 

 

木塊の壁構造により躯体を維持。シンプルなデザインにすることで廊下を挟んだ反対側に増築できる可変性を持たせている。増築した際は階段、廊下を挟んで対になる計算。一続きの木塊パネル構造のため、ガラスを挟んで内部も仕上げ無しの連続性を持たせたかったが、消防法により断念。

                                                 

木塊パネル構造を使ったベンチを兼ねたオブジェ。

教室内には最低限の空気センサーと換気設備は備えているが、人力による窓の開閉で冷気取り込み空調。

予算が少ない中でもデザイン的要素、美観的要素、遊び的要素を何とか取り入れた。

 

木材研磨工場

設計:ヨハネス ダンテレ氏

南側に事務所を追加するデザインにより、作業場は左右対称の安定した空間に。北側に作業場を設けることで紫外線防止するとともにポリカーボネイト全面採用で最大限の自然採光。11×2mの既成集成パネル材を活用し、工期短縮、予算圧縮を図った。

 

バウムシュルガー エーブレ設計事務所
(オーストリア ルステナウ)

 

2013年竣工。ナハルティヒ(持続可能性)の究極の体現、後世への遺産を残すという気概で建設。

 

 

 

 

(エーブレ設計事務所が考えるナハルティヒの定義)

・美しさ・・・美観は当然として、関わる人に美しいと捉えられなければならない。

・持続性・・・少なくとも100年以上の耐久性

・フレキシブル性・・・時代によって変わる価値観、スタイルに対応できなければならない。

原初的パッシブハウスの完成形

100年後を想定しエネルギー状況は不明だが、エネルギー消費が少ないに越したことはない。

・ゼロエネルギー・・・建築費は35%アップしても採算が取れる。

・全自動室内環境調整システム・・・ 断熱レンガと内外装漆喰。素材として美しく、環境負荷がなく空気浄化効果がある。

 

パッシブスクール

設計:エルムト ディーリッヒ氏

築10年ヨーロッパ公開入札による建物で、計画から完成まで18ヶ月の制限があった。また、既存校舎を建材として販売するため、工期の兼ね合いで木造の選択しかなかった。その結果、大変話題の建築となる。全自動環境適応システムを取り入れ、大きな開放空間としての廊下 地下までの採光、交流の場として機能している。外付けブラインドだが目線高さの下窓は塞がず、外界との繋がりを持たせ息苦しさを感じさせない工夫が施されている。地場産材、地場メーカーを活用した黒塗装有孔銅板はヒット商品になった。

 

(体育館)

天窓・角度にバラつきを持たせ充分な採光を確保したうえで眩しくないよう計算。内装はブナの加工材で吸音もかねる。

ヒュプシャー木造建築 ベーリンゲン

1952年創業の材木屋。ミネルギー・パートナー企業として、2代目が3Dプレカット機を導入したのを皮切りに発展。最新のプレハブマシンで高気密・高断熱パネルを高精度で製作し、現地組み立ての高価格の木造建築を手がける。断熱にはセルロースがメインで外断熱に木質系、間仕切りにロックウールを使い分ける。製材時に発生する木屑を燃料に発熱し地域暖房供給を行う。現在では、地域エネルギー供給事業も手がけている。

 

木造改修事例

築30年の木造住宅をスケルトンにし、リノベーションした事例。法令により外観の変更は不可で既存建築部分を残しており、ガラスのファサードと密閉式ドアによる連結。地熱利用+ヒートポンプ採用、窓は高性能化し採光を取る仕組み。鉄骨の梁とコンクリートを一部用いて大空間実現し、同時に20cm厚の床と合わせて蓄熱体とした。最低気温-20℃、-15℃が3週間以上続く地域のため、サッシU値0.6 アルゴン3層でアルミクラッドを閉めた際、サッシが断熱内部に入る構造。建設費用65万CHF(助成金あり)。ローン残債減税が適用されるため、自己負担20~25%、残り20~25年ローンで返済。

 

ジブラット邸 改修事例(HAGA)

築30年の住宅を増築改修、二世帯化。高さ制限により切妻から陸屋根にし、足りない部分は横に増築。趣のある砂岩のサッシ水切りを残すため、開口の大きさは変えずに、サッシのみ交換。径は3cm小さくなったが高性能化で枠がスリムになり日射取得は増えた。1階の古い部分はBiothermで付加断熱し上部分は木質断熱材を、地下部分は発泡ガラス骨材タイプを採用。外壁はカルクファサード、ムラのある仕上がりは町のシンボルの城壁に合わせた。

 

鳥類研究所 改装事例(HAGA)

1954年 鳥類の研究・保護公益財団。人員増・規模拡大に伴い、新たなオフィスに移転、旧オフィスを博物館に改装。デザインコンセプト 「土と錆」(風化を表現)。構造は鉄骨と版築パネル(粘土40+セルロース断熱30+粘土30cm)5×1.5m。地熱パイプ6本+ヒートポンプで機械換気。外部は、出隅および壁面に定間隔に設けた石灰を混ぜた流出防止層でコントロール。はじめは雨で洗い出され大量に流れたが、現在は落ち着いている。

 


 

今回の旅では、各国で次世代のためにきれいな空気やエネルギーを残そうという意識が高まり、政府のみならず川下から変えていこうという国民の強い意志を感じた。また、場所と施主の要望から課題を出し、ナハルティヒの視点を入れて設計しアダプティブ・マネジメント(PDCA)を取り入れている点が印象的だった。100年先は見通すことはできないため、最善策を適用しながらモニタリングし、随時適応して行くことの重要性を実感した。

 

人の生活が主役となる建築と自然との共生を目指し、持続可能性の本質を追求していた。

 

 


 

パンフレットPDF

 

 

 

 Pictures 

 

ツアーコーディネーター TOUR COORDINATOR

Holger Konig ホルガー・ケーニッヒ

1951年ミュンヘン(ドイツ)に生まれる。ミュンヘン工科大学及び大学院で建築を学ぶ。1983年にエコロジー建材店や家具工房を設立後、設計事務所も主宰し、建築家、家具職人、建材流通の多様な経験を持ち、バウビオロギー・バウエコロジーを踏まえた住宅、幼稚園、学校を数多く手がける。
主な著書としてドイツでベストセラーとなった「健康な住まいへの道」(1985年初版・1997年第9版)があり、2000年に日本でも翻訳、出版される。1996年から2001年まで、自然建築材料の建築業者の集まりであるÖKO+ AGの取締役会の議長を務める。以降もそれまでの経験を生かしたさまざまなバウビオロギーや木造プロジェクトの管理や研究を任され、現在も活躍中。

滝川薫さん

滝川 薫 Kaori Takigawa

環境ジャーナリスト・ガーデンデザイナー・MIT Energy Vision社共同代表
東京外国語大学イタリア語学科卒業後スイスに渡る。ベルン州オーシュベルク造園学校植栽デザイン課程修了。1999年から欧州中部の環境・エネルギー転換・建築をテーマとした執筆、視察セミナー、通訳・翻訳を行う傍ら、夫と共同で庭園デザインプログジェクトに携わる。東スイスのシャフハウゼン州在住。
単著書に「サステイナブル・スイス」、共著に「欧州のエネルギー自立地域」・「ドイツの市民エネルギー会社」、共訳に「メルケル首相への手紙」など

 

<新著のご案内>

【新著紹介コラム】「欧州のビオホテル~エコツーリズムから地域創造へ」 滝川薫 著

 

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