とうほく走り描き‖第53回 『暮らしを記憶するリノベ』
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コラム
第53回 『暮らしを記憶するリノベ』
川上 謙さん(LIFE RECORD ARCHITECTS)
川上謙さんが主宰する『LIFE RECORD ARCHITECTS』 は、リノベーションに特化した設計事務所だ。10月下旬、中古マンションをフルリノベーションして自宅兼用の新事務所を開設。そのお披露目のオープンハウスに伺った。
天然スイス漆喰・リボス自然健康塗料を使った内装仕上げ、タイル貼りや土間工事も川上さん自ら参加された。仕上がりも上々で、「もう自分で何でもできますね」と訊くと実際にやってみて「やっぱり職人さんはすごい」と感じたという。
大学在学中のカリキュラムでリノベーションとの縁があり、卒業後もこの業界へ。「リノベーションのリの字も無かった」と就職当時の仙台市場を振り返る。その後、実物件で着々と経験を積み独立。時期尚早という心配より、仙台では「専門に取り組む設計事務所がない」と先駆けにという思いが強かったようだ。
屋号のLIFE RECORD には、古い暮らしの記憶も「受け継いで残していきたい」という意味が込められているという。自身デザインのダイニングテーブルが強い存在感を放つ。続く畳の部屋は、昼はリビングであり、夜は布団を敷いて寝室になる。
以前は、日本のどこの家庭でも見られた生活様式だが、逆に新鮮な印象さえある心地よい居住スペースになっている。既存サッシの内側の木製サッシ、吹込みセルロースの付加断熱で性能も向上している。私はオープンハウスの一週間前に、福島県南会津町の伊南川100kmウルトラ遠足(とおあし)に初出場していた。激しい標高差にも負けず、15時間49分でゴール。4年ぶりの100kmレース完走だが、今回の勝因のひとつは食事だと感じている。アスリート向けの「食」をテーマとした練習会に参加、しっかり食べて体を作る大切さを学んだのがきっかけで、食生活がかわり体重はほぼかわらないが体にぐっと力が入るように感じる。
川上さんの新事務所も、古い躯体に、新たな栄養(部材・技術)を取り込み力がみなぎっているようだ。このままどんどん遠くまで走っていきそうである。
〈筆者プロフィール〉
中島信哉:株式会社イケダコーポレーションの営業として、
現在は東北6県と北海道を担当。仕事のかたわら始めた
サインペン画やマラソンが話題に。
【2018年11月 北海道住宅新聞掲載】