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とうほく走り描き‖第10回 『本物の木に触れる手伝い』

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とうほく走り描き10回イラスト

第10回 『本物の木に触れる手伝い』

渡邊 英木さん (家具工房モク

 

3月、山形の「家具工房モク」さんを訪ねた。家具用のメンテナンス製品の提案だ。無垢の家具は、オーナーが手入れしていくことで、よりよい風合いに変わっていく。主宰の渡邊英木さんはわたしと同世代。山形の木を使った丁寧な家具づくりは、お客様の 評価も高く注文の途切れることのない人気の工房だ。

 

オイル仕上げのときはリボス自然健康塗料を使っていただいている。この日は、4月に開園をひかえた市内の保育園からのオーダーで、園児用のテーブルとイスを製作中。木の切り株をイメージしたデザインのイスは、クリ・ブナ・サクラ・オニクルミなどさまざまな樹種を使い、年輪を模した加工を座面に一本一本手作業で刻んだ労作だ。わたしが学校で無垢の木の机やイスを使っていたのは、記憶違いでなければ小学校1年生まで、2年生にあがると天板や座面が合板で足の部分はスチールパイプ製のものに変わっていた。線路の枕木や電柱がコンクリートにかわったのもその頃ではないか?ほんものの木が生活空間から次々と消えていった子ども時代だったようだ。

 

渡邊さんが生まれ育ったのは古い民家。工房はその敷地にあり、ギャラリーも築100年を超える蔵を改装したものだ。昔の家は、壁も床も黒っぽい。「クリなど、タンニンを含む木は、黒く経年変化していく」そうだ。小さいころから、ほんものの木に囲まれて育ったことで、自然と木を扱う仕事を選んだのかもしれない。マラソン初体験が小学校の体育という人も多いだろう。わたしもそうだ。それほど長い距離ではなかったはずだが、息が切れ、脇腹が痛くなり、決して楽しくはない思い出だ。

 

44歳からのマラソンは、無理をせず、ラン仲間と普通に話ができるスピードから練習をスタート。「なんだ、苦しくないんだ」と実感し、今でも楽しく走り続けている。マラソンを始めたい人には「早歩きのようなスピードで、距離は考えず、走る時間を少しずつ増やす。5分から始めて、2時間走れるようになったら、フルマラソン完走圏内」と話している。無垢の木の家具はメンテナンスが必要で、納入先の保育士さんの仕事が増えてしまうかもしれないが、「ほんものの木」に触れ合う子どもたちがうらやましい。もしかすると、その中から 未来の家具作家が生まれるかもしれない。

 

 

 


〈筆者プロフィール〉

中島信哉:株式会社イケダコーポレーションの営業として、
現在は東北6県と北海道を担当。仕事のかたわら始めた
サインペン画やマラソンが話題に。

中島さんプロフィール画像


 

【2015年4月 北海道住宅新聞掲載】

 

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