とうほく走り描き‖第38回 『みんなにやさしい建築』
-
コラム
第38回 『みんなにやさしい建築』
片岸 弓枝さん(かたぎしゆみえ建築設計事務所)
岩手県滝沢市の、かたぎしゆみえ建築設計事務所・片岸弓枝さんは、断熱・木造の確かな知識をベースにした住宅設計に定評がある。自然素材も巧みに取り入れ、リボス自然健康塗料、エコロジー壁紙オガファーザーを好んでスペックしていただいている。
住宅街の一角にある事務所は、築50年の平屋を断熱改修したもの。狭い路地に面した事務所の壁は、あたかも何十年も経過した風情の縦張りの無垢板。元の建物の複雑な屋根形状をシンプルに整えて、落ち着いた雰囲気をつくっている。少しの時間眺めていたくなる優しい佇まいだ。片岸さんが建築の道に進んだ理由は「化学より物理が得意だったから」。強い動機はなかったが、建築学科に進むと日に日に建築への興味が高まり、卒業後は地元岩手の設計事務所勤務、ゼネコンの現場管理といった激務も経験、すっかり業界の人になっていく。
住宅設計に興味を持ったのは「家庭を持っても長く続けられる建築の仕事」を考えたから。友人から聞いた「芝棟」という言葉が縁で、秋田・能代市の西方設計を訪ね、やがて事務所スタッフに。住宅を「多いときは7〜8件、同時進行」で設計業務に携わり、濃密な時間を過ごした。事務所の窓から、ちょうど解体途中の古い住宅が見えた。「形がいいから、壊してしまうのがもったいない」と片岸さん。様々な建築業務に精力的に取り組んできたから感じる「形の美しさ」なのだろう。
マラソンのレース会場に行くと、ランナーのウォーミングアップの様子・話していること・ウェアやシューズなどで、おおよその実力がわかる。特に体型には如実に走り込み具合が現れる。十分練習を積み、自信に満ちた人には、相応の佇まいがあるようだ。
〈筆者プロフィール〉
中島信哉:株式会社イケダコーポレーションの営業として、
現在は東北6県と北海道を担当。仕事のかたわら始めた
サインペン画やマラソンが話題に。
【2017年8月 北海道住宅新聞掲載】