第15回 (2011)|エコバウ建築ツアー報告記
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イベント
コラム
これまでドイツのエコ建築を中心とした欧州の旅でしたが、開催第15回目はフランス・パリの建築にフォーカスしたツアーとなりました。
ドイツの隣国であるフランスでは、2007年に開催された「環境グルネル会議」を契機に「持続可能な社会=エネルギー消費量削減」へ大きく歩み出しました。
地球温暖化防止・CO2排出量削減を打ち出した環境政策は、当然の事ながら住宅・建築にも波及し、エネルギー消費を抑えた エコロジー建築へとシフトした頃でした。
EUでは、一次エネルギー消費量を抑えた高性能な省エネ住宅(パッシブハウス)が実用化され、震災を機に日本でも注目を集める省エネルギー住宅設計のヒントがたくさん詰まっていました。
今回は、レポート形式ではなく、実際に訪れた物件をご紹介します。
ツアーレポート
tour report
Day1
■ 経済、社会、環境協議会 イエナ宮殿
環境協議会–Conseil Economique Social et Environnemental (CESE)
物 件: フランス共和政協議会
建築家: オーギュスト・ペレ
資料:「Conseil Economique Social et Environnemental (CESE) ~ 経済社会環境評議会(CESE)~」
■ 19世紀の都市化(Georges-Eugène Haussmann)
パリの街の改善 1852 年・1870年 パリ中心地 市内観光
建築家:
デシャン、ヴィクトール・バルタール、
テオド-ル・バリュー、ガブリエル・ダ
ヴィオゥド、ジャック・イトルフ(All)、ジ
ャン=シャルル・アルファン、ジャン=ピ
エール・バリエ=デシャン
工 期: 1852年~1970年
資料:「Transformation of Paris during the Second Empire sovereignty ~第2帝政時代のパリ改造~」
■ 建築と国立市遺産 現代建築のギャラリー
物 件: シャイヨー宮 文化財博物館
建築家:
ルイ=イポリット・ボワロー、ジャック・
カルリュ、レオン・アゼマ
工 期: 1928年~1937年
■ パリ・オペラ座 ガルニエ宮殿(Charles Garnier)
Day2
■ 元発電所のリノベーション(Emmanuel Saadi 2007)
建築家: Emmanuel SAADI(1960年?)
工 期: 2006年~2010年
資料:「Hotel d’activité Raymond Losserand」
■ラ・ロッシュ=ジャンヌレ邸
近代絵画のギャラリーのある家
建築家: ル・コルビュジエ
工 期: 1923-1925
■ ケ・ブランリ美術館(Jean Nouvel 2006)
■ヴェレダ 美と健康
Day3
オフィスビル Mediacom 3«ゼロ エネルギー»
ゼロエネルギーのオフィスビル
建築家: フランソワーズ=エレーヌ・ジュルダ
資料:「Mediacom3」
■ サン・テグジュペリスクール(Emmanuelle Patte,)
教育施設
建築家: アトリエMeandre Christian Hackel,Emmanuelle Patte
資料:「Saint-Exupery school ~サンテグジュペリ校~」
■ ラ・デファンス・パリ EPADESA
■パッシブハウス
Pascal Gontier邸
建築家: Pascal Gontier(1963-)
Day4
■ シュタイナースクール Verrières-le-Buisson
■コニャック・ジェイ病院
建築家: Toyo ito & Associates Architects
■アドバンシアビジネススクール(Architecture Studio Alan Bretagnolle)
建築家: Architecture Studio,
工 期: 2011年
Day5
■都市計画・エコ・カルティエ(都市の環境共生モデル地区の整備プロジェクト)
■ 社会住宅 パリ20区(Pascal Gontier 2010)
パッシブ アパート
建築家:Pascal Gontier(1963-)
竣 工:2010年10月
■ Frequel-Fontarabie,パリ(Eva Samuel)
元修道院のオフィスへのリノベーション
建築家: Frederic Vincendon and Thomas Corbasson
竣 工:2003年
■A/NM/A ニコラ・ミシュラン建築事務所
設計事務所訪問、セミナー受講
建築家: Nicolas Michelin
今回のエコバウツアーは、初のフランスということに加えて、フランス人コーディネーター(Sabard氏)により、フランスの都市開発の歴史をたどるツアーとなった。
1860年~70年に建築されたオペラ ガルニエ宮殿をはじめ、1950年から行われたオスマン都市改造計画から、近代化に伴う超高層ビル群(ラ・デファンス)の建築を“エコロジー反面教師”として視察。
2000年以降(2007年には グルネル会議が開催)は、都市の環境共生プロジェクトが進められており、省エネ住居の建築もラ・デファンスの低層住宅地域(旧工場跡地)に計画されている。しかし、原子力大国フランス、環境を意識した建築は国主導のもと都市開発がすすんでいると感じる。そんな中、パッシブ住宅を設計するGontier氏の建築は、熱交換システムや地熱循環システムを取り入れ、持続可能なエネルギー住宅を意欲的に進めており自邸もパッシブ住宅であった。また、戸建だけでなくアパート(7階建)の集合住宅にもそれらシステムが取り入れられている。
その他、エコバウツアーの定番であるシュタイナースクールは、パリ市内からバスで1時間半程の郊外にあり、建物は近代建築ではなく元々植物などを貯蔵する建物と住居をほぼそのままに再利用していた。 自然豊かなところで『自然と調和する』シュタイナー思想がそのまま感じられる学校を視察。
Gontier氏のパッシブ住宅でも窓を大きくとったり、庇に太陽光パネルを施したりとシンプルで上品であるのが印象的だった。リノベーション物件は外壁だけを残して内装は全改装しているものが多く、古い街並みと残して共存しようとしている。
フランスのエコロジーは物件(単体)であるが、ドイツはコミュニティー(地域社会)全体でエコロジーを育む地域性を再認識したツアーになった。
Pictures
ツアーコーディネーター TOUR COORDINATOR
Holger Konig ホルガー・ケーニッヒ
1951年ミュンヘン(ドイツ)に生まれる。ミュンヘン工科大学及び大学院で建築を学ぶ。1983年にエコロジー建材店や家具工房を設立後、設計事務所も主宰し、建築家、家具職人、建材流通の多様な経験を持ち、バウビオロギー・バウエコロジーを踏まえた住宅、幼稚園、学校を数多く手がける。
主な著書としてドイツでベストセラーとなった「健康な住まいへの道」(1985年初版・1997年第9版)があり、2000年に日本でも翻訳、出版される。1996年から2001年まで、自然建築材料の建築業者の集まりであるÖKO+ AGの取締役会の議長を務める。以降もそれまでの経験を生かしたさまざまなバウビオロギーや木造プロジェクトの管理や研究を任され、現在も活躍中。